学士(看護学)を取るということ

一昨年から去年の約1年をかけて、学士(看護学)取得に取り組んだのですが、終わってみると意外とあっけなかったなぁと感じます。

2期に渡る放送大学での単位取得は、忙しかったのは単位認定試験の前日と当日だけでしたし、”学生に戻る”といっても日常生活は何にもかわりませんでした。

大学単位認定試験は、たいていの場合「常識」的な判断で解けますから苦労はあまりありません。でもどんな人でも学修成果レポート作成にはそれなりの努力は必要なはず。

そうなると、やっぱり看護学士取得でのいちばんのイベントは、学修成果レポート(≒学位認定論文・卒業論文)作成だったと思います。

学位授与機構で看護学士を取る場合のキモは、この論文作成にあるといっても過言ではないでしょう。

ちょっと話を一旦止めますが、学士(看護学)を取得することでどんなメリットがあるのでしょう?

いちばんわかりやすいのは、大卒扱いとなって勤務病院での俸給表が変わるというパターンですが、私の場合も含め、すでに在職中の人の場合はなかなかかなわないことが多いようです。(転職に関してはいい話もよく聞くのですが)

勤務病院が、看護学士取得を評価してくれなかった場合、学士取得の意味がないのかと言われれば、私はそんなことはないと断言します。

私が考える学位授与機構を通した学士取得のメリット。
それは「主張できるナースになれること」だと思っています。

これは、主に学修成果レポート作成のプロセスのことを言っているのですが、看護専門学校卒の看護師の場合、ケースレポート等で叙情的な長めの文章は書き慣れていても、ひとつのテーマを理論立てて組み立てて、長文レポートにまとめる訓練はほとんど行われていないはずです。

大学評価・学位授与機構ではA4レポート用紙で10~17枚の学術論文形式の「学修成果レポート」の提出を課していますが、この作成過程で学べることは「自分の主張をいかに客観的に人に伝えるか」ということだと思うのです。

看護師として仕事をする上でいろいろ不満もあると思います。それを愚痴るのは誰でもできますが、それを「気付き」として業務改善につなげていくのは、病院組織の中ではなかなか難しいことです。

そんなとき、役立つのが「学修成果レポート」作成過程で身につける論理的思考とその表現方法だと思うのです。

これは私の場合ですけど、この4-5年間、所属の手術室や病院全体の様々な問題点を所属師長や安全対策委員会、職員課長などに訴えてきましたが、みんな話は聞いてくれますが「そうだね、それは難しい問題だね」というだけで、なかなか行動には移してくれません。

何回か言ってダメなら、最後は文章の形でまとめて提出します。すると意外とサラッとことが進んでいくんですよね。そこで学んだことは本当に何かを変えたければ口頭ではダメ。形に残る文書にしなければということでした。(このあたりの具体的な取り組みは「看護師の労働条件」の過去記事をご覧下さいな)

愚痴なら誰でも言えますが、それを文章にしようとすると、結局自分が何を言いたいのかわかっていないということがわかったりもします。そして本当に自分の主張が正当性があるのか、妥当なのかという点も自分自身に対して明白になります。

こうした思考過程はまさに学修成果レポート作成の初期段階と同じです。

さらに自分の主張の正当性を増すために、他の病院ではこうしているというのをわかってもらうために、似たような取り組みについての雑誌記事のコピーを添付したりするとより効果的です。

論文作成とまったく同じですね。

つまり、自分の主張を論理的に文章にまとめて根拠をもって人にプレゼンテーションできること。これが大卒レベルのひとつの指標だと思います。

それはなにも論文作成だけではなく、日頃の業務の中でも普通に活かせる意味のあるスキルです。

そうした思考訓練が、学修成果レポート作成というステップであり、それをクリアした人だけが学士認定を取れるというのは意味のあることだと思います。

何のために学士(看護学)取得を目指すのか、動機は人それぞれでなんでもいいと思います。

でも、それをクリアできたということは、アカデミックな意味で大卒レベルと認定されたわけですから、ただ証書(学位記)に満足するだけではなく、自然と身についたはずの論理的思考過程をぜひ活かしてほしいと思っています。

大卒ナースと専門学校卒ナース、どっちが仕事ができるかというような議論がよくありますが、臨床実務では違いはまったくないにしても、もしかしたら、病棟カンファレンスや、委員会の会議の場での発言やプレゼンテーションで、やっぱり「あの人は違う」というふうなことになるかも知れません。

せっかくの努力の結果を、どこかで活かせる場が見つかるといいですね。

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コメント

  1. よーこ より:

    管理人さん、はじめまして!主人の仕事でアメリカに在住してます。16年前に、専門学校を卒業した看護師(現在、休職中)ですが、物足りなさを感じなんとか学士を取りたいと考えていたところ管理人さんのホームページを拝見し、色々と参考にさせていただきました。放送大学で単位を一年で取得し、この4月学位授与機構に申請しました。現在、結果待ちです。ところで、同級生に先日この話(看護学士)をしたところ、学士を取ったところで職場ではなんの意味もない、大卒看護師は即戦力にならない、若い人に張り合う気もない、と言われました(38歳ですけど。)。なんだか悲しい気持ちになったと同時に、これでは看護婦の地位は向上しないのでは・・・なんて思ったんですけど。
    確かに、まだ職場の認知度は低いと思います。しかし、学士=論理的に物事を述べることが出来るという評価であり、それは医療現場で常に冷静で、客観的に判断し、実施に至ると過程で必要とされる事なのではないかと思うんです。特にプレゼンにおいては日本ではあまりみられませんが、アメリカではその能力が重要視されています。その能力が備わってるかどうかは、大卒看護師と専門学校卒看護師の違いではないでしょうか。私の卒業した学校では研究や論文の書き方なんて全く勉強しませんでしたから、看護研究においても大変苦労しました。それに、昨年閉校にもなってしまって・・・。私も変わらなくてはなんて日々感じています。まだ、学士が取れるかわかりませんが、頑張ります!
    ホントに有難うございます!お仕事頑張って下さい!

  2. よーこ より:

    管理人さん、はじめまして!主人の仕事でアメリカに在住してます。16年前に、専門学校を卒業した看護師(現在、休職中)ですが、物足りなさを感じなんとか学士を取りたいと考えていたところ管理人さんのホームページを拝見し、色々と参考にさせていただきました。放送大学で単位を一年で取得し、この4月学位授与機構に申請しました。現在、結果待ちです。ところで、同級生に先日この話(看護学士)をしたところ、学士を取ったところで職場ではなんの意味もない、大卒看護師は即戦力にならない、若い人に張り合う気もない、と言われました(38歳ですけど。)。なんだか悲しい気持ちになったと同時に、これでは看護婦の地位は向上しないのでは・・・なんて思ったんですけど。
    確かに、まだ職場の認知度は低いと思います。しかし、学士=論理的に物事を述べることが出来るという評価であり、それは医療現場で常に冷静で、客観的に判断し、実施に至ると過程で必要とされる事なのではないかと思うんです。特にプレゼンにおいては日本ではあまりみられませんが、アメリカではその能力が重要視されています。その能力が備わってるかどうかは、大卒看護師と専門学校卒看護師の違いではないでしょうか。私の卒業した学校では研究や論文の書き方なんて全く勉強しませんでしたから、看護研究においても大変苦労しました。それに、昨年閉校にもなってしまって・・・。私も変わらなくてはなんて日々感じています。まだ、学士が取れるかわかりませんが、頑張ります!
    ホントに有難うございます!お仕事頑張って下さい!

  3. ひかる より:

    metzenbaumさん、こんにちは。
    学士を取られてからのご活躍には目を見張るものがあります(勿論それまでのご活躍もすごい!と思っています)。
    先日、学位授与機構の試験を受けてきました。思ったより難しくないと感じ、書きたいことが次から次へと浮かび、すらすらと解答用紙裏面の最後までびっしり書いてしまいました。
    内容的には自信がありますが、今心配しているのは字が下手なので、そんなびっしり書いて読みにくいのではないかな?ダラダラ書きすぎたかな?ということです。それで落とされたらショックです。
    合格発表まで結構長いですから心臓に悪いですけど、良い結果を期待し過ごします。
     
     
     
     
     
     

  4. きょうこ より:

    7年看護師として働きて、2年半程休暇中です。そろそろ復帰しようと考えているところですが、大学にも興味があり大学か就職か悩んでいたところです。こんな方法もあったんですね。挑戦してみようかと思います。