AEDは心停止を判断する道具ではない!

心臓が止まっているかどうかの判断はAEDがして教えてくれる。まずはAEDを使おう!

この言葉、看護師の皆さんは、どう感じますか?

近年、こんな感じで、迷ったらAEDを装着しよう、的なキャンペーンがネット上で展開されています。

心停止事案に対して、AEDの使用率が低いという統計データや、男性に比べて女性へのAED使用率が低いなどの報道から、とにかくAEDを使おうよ、という論調が今までになく強まっているのを感じます。

救命法を広めようというのは大賛成ですし、私もこの20年くらい、そんな活動に没頭している立場です。

しかし、前述の言葉のように猫も杓子もAEDという論調には辟易しているというか、はっきりいって危惧しています。

なにが危険かわかるでしょうか?

AEDという道具を正しく理解していれば、AEDという道具の根幹に関わる致命的な誤報、デマを含んでいることに気づくと思います。

AEDは人間が心停止を確認したあとに装着する設計になっている

まず、はっきり言っておきたいのはAEDは心停止を判断する機能はついていません。というか、心停止の判断は不可能です。

だからAEDを装着する前に、人間が心停止判断を行った上で、使用するように教えられているわけです。AEDの取扱説明書や添付文書でもその点は強い論調ではっきりと書かれています。【参考過去記事

市民向けの救命講習レベルであっても、AEDを装着するのは必ず胸骨圧迫が始まったあとです。つまり、市民レベルで言えば、「反応なし+呼吸なし」をもって心停止を判断し、その後、胸骨圧迫を開始して痛みへの反応などの生命兆候がないからこそ、後から届いたAEDを装着できるのです。

AEDは、基本的に心電図解析しかできませんから、その波形が心室細動(VF)のような必ず心停止であればいいのですが、心室頻拍(VT)のように脈がある場合とない場合があるような波形だとお手上げです。

そこで、誤って生きている人間に除細動の電気ショックをしないように、AED装着前には心停止判断を人間が行うようになっているです。これは工業製品設計上の前提条件、仕様です。

この前提条件なしには、工業製品として成り立たないという「お約束」です。

生きている人に電気ショックをしてしまう危険性

心停止かどうかはAEDが判断してくれる、という言い方をした場合は、完全な間違いと言わざるを得ません。

AEDは心停止の種類を判断する道具です。そもそも「心停止」に種類があるということを知らない人にとっては不思議に聞こえるかもしれませんが、ざっくりいうと、電気ショック(除細動)が必要な心停止か、不要な心停止かということです。

人間が生命兆候がなく心停止と判断した後で、心停止の種類を見分け、電気ショックで救えるタイプの心停止をピックアップするのがAEDの弁別機能です。

AEDがショック不要と言った場合、生きているからショックが不要な場合もありますが、ショックが不要な心停止(無脈性電気活動ないしは心静止)である可能性もあります。

そもそもAEDを装着するような場面であれば、生きている可能性より、ショックが不要な心停止である可能性が高いのではないでしょうか?

AEDがショック不要と言ったら生きてる証拠?

ここまで説明すればお気づきかもしれませんが、AEDを心停止判断の道具として使った場合、AEDがショック不要と言った場合は、心停止ではない、という判断となり、本当は心停止(無脈性電気活動ないしは心静止)なのに胸骨圧迫すら開始されないという事態に陥るのです。

倒れている人がいたら、まずはAEDを貼れ! という指導スタンスは、いっけんすると救命率向上に寄与しそうな印象もありますが、救命法の普及という点では致命的なバグを抱えていることがお分かりいただけるでしょうか?

じゃ、どうしたらいいのか?

現実問題、市民レベルでも求められている呼吸確認は難しいというのは否めません。

今までも死戦期呼吸を「呼吸あり」と判断されてCPRもAEDも実施されなかったケースは多数報告されています。

でも、だからといって高度管理医療機器であるAEDを、メーカー推奨を無視して使用するように教えるのはあまりに乱暴すぎます。

でもその点、答えは簡単。

昔から言われているように、迷ったら胸を押せ! です。

胸を強く押し続けたときに痛がる素振りや反応がなければ、生命兆候なし、心停止と判断することに異論はないはずです。

胸を押すという行為のハードルが高いと反論する方もいるかと思いますが、他人の服をはだけて素肌にパッドを貼るという行為と、服の上から胸を押すという行為、どっちが難しいでしょうかね?

AEDには心停止を判断する機能はないという歴然とした事実と、取扱説明書でも心停止を確認してから使うように強く書かれている事実、そして、医療機器であるAEDは本来は医師でないと使えないという重さを考えたときに、まずは胸を押せ! ということの妥当性は納得いただけるのではないでしょうか?

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