病棟ナースが呼吸数を「記録」するべき理由

先日、Twitter に「看護師はバイタルサインの中でも呼吸数は見ない人が多いよね」と書いたら、いろいろな意見を頂きました。

呼吸数は正確には数えていなくても、異常がないかはちゃんと毎回チェックしてるよ、という意見が多かったです。

結論から言うと、呼吸数は記録に残さないと意味がない、ということなのですが、これから解説したいと思います。

 

バイタル測定はその瞬間の状態を知るためではない 点ではなく線


入院患者のバイタルサインを毎日観察する目的はなんなのか?

今現在、状態が悪くなっていないかをチェックするということで、患者状態にあわせてバイタルサインのチェック間隔が設定されています。(手術からの帰室直後は頻回で徐々に間を開けていく、みたいな)

しかし、気をつけなくてはいけないのは、バイタルサインのチェックは、その瞬間の状態を「点」で確認するためだけではないという点です。

温度板で体温や血圧などをグラフ化するのは、トレンド、つまり傾向を探り、予測するためですよね?

悪化しているのか、改善しているのか、横ばいなのか?

グラフ化したときの線の角度が重要なのです。

病棟での急変は防げる

病院内で発生する不測の心停止の8割が 呼吸不全ショック の悪化によるものです。

BLS講習で教わるような心室細動(心臓突然死)は2割程度と言われています。

つまり、入院患者の場合、防ぎ得ない不可抗力の死はたったの2割で、8割は突発性ではなく、予見可能なものというのが今の急変対応の常識です。

そのため、病棟看護師には、BLSができるという以上に、呼吸障害と循環障害(ショック)の初期症状に気づく能力が求められていると言えます。

血圧低下とSPO2低下に気づくのでは遅い

バイタルサインの変化のうち、とかく私たちが重視しがちな血圧や酸素飽和度の値は、ある意味最後の砦。状態悪化の最後の段階で変動する因子です。

というのは、人間にはホメオスタシス(恒常性)がありますから、障害が発生したときには代償機構が働き、酸素飽和度と血圧を下げないような努力(呼吸促迫や心拍数増加など)が始まるからです。

その努力(代償)でカバーしきれないくらいに状態が悪化したときに、はじめて酸素飽和度が下がり、血圧が下がります。

つまりSPO2が下がったり、血圧が下がったときというのはすでに重篤化している、もしくは末期ということ。

ですから、日頃、血圧とSPO2しか見ていないと、気づいたときはいつも重症化したあと、ということになります。

重症化してから気づいたケースが 急変 と呼ばれます。

本来なら緩徐に悪化していたとしても、それが末期になってからしか気づかないので、急激な変化(急変)と感じてしまうわけです。本来は緩徐な悪化であったとしても…

呼吸不全もショックも、まずは呼吸回数が増える

重篤化するまえの悪化の初期で気づくのが看護師としての理想です。

となると、悪化の初期に発生する変化に敏感でありたいものです。

そこで注目すべきが 呼吸回数 なのです。

呼吸状態悪化にしろ循環状態悪化にしろ、結局は組織細胞から見たら酸素不足なわけで、その代償として呼吸数変化がまっさきに現れることが多いと言われています。

組織細胞の酸素化という生理学的安定が崩れ始めると、呼吸数が少しずつ上昇していくという変化が見られます。

それが緩徐であった場合、日々の呼吸数を点で捉えているようだと、微細な変化に気づけません。

日々の呼吸数を記録するからこそ、緩やかな上昇がグラフとして示されて、悪化の可能性に気付けるわけです。

ですから、「今日、呼吸数は速くはなかった」というナースの主観的判断だけで問題なしと判断して看護記録に残さなかったとしたなら、トレンド(傾向)が見えませんから、勤務帯をまたいだ状態悪化に気づけないのです。

 

まとめ:病棟全体で呼吸回数記録を標準化しましょう

呼吸の様子をざっと見て「問題なし」とスルーするのではなく、日々の呼吸回数をちゃんと記録に残しましょう。

これは誰かひとりがやっていても意味がありません。

病棟として、看護師全員が記録化しなければ意味をなしません。

病棟での急変とはなんなのか? 病棟スタッフ全員で認識を新たにして、組織として取り組むことが必要です。