悪徳医師から患者を守った? いいえ、ナースも共犯です!

ちょっと前にこんなニュースが流れました。


「カルテ書き換えろ」院長の不正、長年横行か 開業9年で100人以上が辞職 看護師たちの“防衛策”

(沖縄タイムズ 2021年10月21日 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/850305)


事件の詳細は最下段に載せておきますが、記事のスタンスを見る限り、悪徳医師の悪行とそれに抗った看護師、という図式で描かれているように見えます。

診療報酬の不正請求をしていた医師。

嘘の診断名をつけて使う必要のない薬剤を投与したように見せるために、虚偽の注射指示箋を出す医師に対して、不要な注射をして患者に危害が及ばないように、カルテに★印をつけるなど、看護部として工夫をしていたという内容です。

さて、この報道をどう読み解くか、です。


争点は2つ 診療報酬不正請求は?


この事件の違法性は2つのあると思います。

1.不必要な薬剤投与指示による健康被害(傷害罪)
2.使っていない薬剤の費用請求(詐欺罪)

看護師は 1 に関しては、不要な注射箋に関しては、独自ルールで目印をつけることで誤投与を避ける工夫、努力をしました。

しかし、2 に関しては何もしていません。

つまり、健康被害は防いだかもしれませんが、患者の財産の損失、さらには健康保険の不要な支出に関してはスルーしているのです。

これはこれで、詐欺が成立している、とも言えます。

つまり、看護師は詐欺に加担しており、共犯とも言える状況なのです。

看護師の皆さんはどう考えますか?

このニュースを看護師である皆さんは、「自分ごと」として考えたはずです。

もし自分がこの看護師だったらどうしただろうか? と。

つまり、医師から不法な指示を受けた場合、自分に何ができるか? です。

不必要な薬剤を、不要とわかっていながら自分の手で患者に投与する。

場合によってはそれで死んでしまうこともあるわけですから、できない、というのは当然です。

だからこそ、今回の報道のような対応になったと思うのですが、これは本当にナースとして最善の方法だったのでしょうか?

医師の指示が間違っている、それが診療報酬を騙し取るための嘘だとわかっていたから、★印などをつけて区別したわけですよね?

であれば、その間違いを指摘するのが看護師の責任です。

そこを実際のところどうしていたのかは報道からはわかりません。

しかし9年間で100名近くの看護スタッフが辞めているということからすると、1人や2人は、そこを直接訴えた人もいることでしょう。それでも是正されなかった、というのが実際のところかなとは想像できます。

しかし、しかしです。

そんな間違った状況であっても、診療の補助を続け、医師の不正行為を幇助していた看護師がいたというのも事実です。

患者に健康被害が起きないように頑張っているから許されるとでも思っていたのでしょうか?

それでも患者からは使ってもいない薬の代金が不正請求され、健康保険からはもっと多額も持ち出しが生じていたわけです。

患者から見たら、不正請求など知る由もありませんから、悪徳医師から自分を守ってくれるはずの看護師がなにも行ってくれなければ、共犯と言われても言い逃れはできません。

法律上、看護師は診療の補助として医師の指示に従って医行為を行う存在となっています。

しかし、看護師の倫理憲章でも歌われている通り、ロボットみたいに医師の支持に従うのではなく、看護の専門性として患者を守るのが看護師の職務です。医師の指示が間違っていれば、そこに介入することも看護師の責務です。

マスコミ報道スタンスをどう考えるか?

今回の報道を見る限り、ナースの責任を糾弾する雰囲気は見られません。

むしろ、医師の悪徳行為に精一杯抵抗した看護師あっぱれ、みたいにも見えます。

このスタンスをどう理解するかですが、私には、看護師は見くびられてるなと感じました。

医師の下僕であるナースにしてはよくやった、みたいな。

看護師としてはこの報道をよく噛み締めてほしいです。

自分たちは医師の指示に従ってロボットのように動けばいい存在なのか?

看護師の自律を謳うのであれば、療養上の世話だけではなく、診療の補助というクリティカルに命の直結する医療処置に関して最後の番人になるという覚悟があるのか?

時として医師の間違いや不正を指摘して訴え出る覚悟があるのか?

その覚悟がない看護師はプロではないと思います。


「カルテ書き換えろ」院長の不正、長年横行か
開業9年で100人以上が辞職 看護師たちの“防衛策”

帝王切開手術をしたかのように装い診療報酬をだまし取ったとして沖縄県警に20日、詐欺容疑で逮捕された容疑者(52)が院長を務める沖縄市の「あいレディースクリニック」では長年、不正が横行していたと複数の関係者が口をそろえる。病院への不信感などから、辞めた職員は開業から約9年間で100人以上に上るという。元職員の1人は「(容疑者は)患者を利用し、医療費を取れるだけ取るという姿勢。不誠実な対応や入院費などの高額請求で転院する患者も多く、本当に申し訳なく思っていた」と吐露する。

■カルテに印を付けて

「ここのほとんどが全員ハイリスク妊娠のようだった。(容疑者から)健康なのに『妊娠高血圧症候群』と病名を入れてカルテを書き換えろ、とか普通にありました」。元看護スタッフが打ち明ける。「ハイリスク妊娠」と診断すれば、高額な点滴薬「マグセント」を使ったことにして診療報酬を架空請求できるからだという。「うそだと分かっていても、医師が言うのでみんな従うしかなかった」(同)。

現場の看護師たちは、特定の病名に使う薬剤を間違って健康な妊婦に投与しないよう、カルテに「★」「●」など印を付けて“事実”と“虚偽”を区別し、医療ミスに細心の注意を払ってきたという。

別の元職員は「カルテの印は、院長の不正から自分たちを守るために看護部で決めた」と明かす。診療報酬明細書(レセプト)の作成係に渡される虚偽のカルテとは別に、看護部では「紙カルテ」と呼ばれる正確な事実を記したもう一つの患者記録を用意し、ミスが起きないよう防衛策を講じていた。

虚偽のレセプト作成に加担させられてきた元職員によると、診療報酬請求は月締めで、毎月2千万~3千万円に上ったという。「多いときは、不正の報酬点数で毎月50万点(500万円)、平均で20万点(200万円)はあった」といい「不正が常態化していて、何が事実かも分からなくなるぐらい、現場は混乱していた」と振り返った。

■院長は「ミス」と主張

容疑者は逮捕前、本紙の取材に対し、診療報酬明細書(レセプト)の意図的な改ざんや架空請求を否定。事実と違うケースがあれば「スタッフや看護師のミスだった」との認識を示していた。主なやりとりは次の通り。

-緊急帝王切開手術の実態がないのに、うその内容で診療報酬を請求したか。

「医事課のミスもあるかもしれない。今いるメンバーに確認したが分からないと言っていた。ただし、医事課は少ない時間で外来対応しながらレセプトのチェックをするので、ミスは多いと思う。もしあれば訂正したい」

-そのような事実はない、ということでいいか。

「まあ、医事課に聞いたところ、そういう事実はないということ。そのようなことはしていません」

-使っていない薬剤をレセプトに記載して、診療報酬を請求したか。

「使っていない薬剤をレセプトに記載すれば、患者から『使っていませんよ』と当然言われるので。そういう事実はないです」「ただし、看護師も忙しいので予定していない薬を使ったけど記録ミスとか、転記漏れ、というのはあると思う」

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