ここが変わった! BLS/ALS【G2015】|蘇生科学者になりませんか?

去年の10月に改定された心肺蘇生法のガイドライン。

看護雑誌でもようやく取り上げられるようになったきたようです。

こちらはエキスパートナース誌の2016年1月号

特集記事は、

「ここが変わった! BLS・ALS」です。

ここが変わったBLS/ACLS|エキスパートナース誌

ガイドライン改訂の中身については、すでに JRCガイドライン2015オンライン版 でご存知の方も多いと思います。

分量が膨大でどこから読んでいいかわからないという人は、AHAガイドラインのハイライト というガイドライン変更点がコンパクトにまとまったPDFが無料配信されています。(米国版ガイドライン準拠ですが)

AHAガイドライン・ハイライトは最初から日本語化もされていましたので、こちらだけは目を通したという人も多いかもしれません。

今回、看護雑誌でガイドライン改訂が特集されたということで、看護師にとって、なにが変わるのかという点に注目しましつしたが、エキスパートナースの記事は、なかなかの好印象でした。

まず、基礎情報のおさらいですが、JRC版蘇生ガイドライン2015で変更になったのは大きく下記の点です。

BLS(一次救命処置)
1.死戦期呼吸の判断に迷ったらすみやかにCPRを開始する
2.胸骨圧迫の深さの上限 6cm
3.胸骨圧迫のテンポは100?120回/分
4.CPR中は100%酸素の根拠性

ALS(二次救命処置)
1.マニュアル除細動の2回目は高エネルギー量で
2.バゾプレシンは非推奨
3.抗不整脈薬の第一選択はアミオダロン
4.低体温療法は32?36℃

このあたりはガイドラインを見ればわかることですが、今回のエキスパートナース特集記事で特に目を引いたのは、「社会に与える影響と”ナースに期待されること”」という部分。

ガイドラインの変更を総論的にとらえた解説記事としては端的で良かったです。

詳しくは本記事に譲りここでは触れませんが、やっぱりナースにはCPRの質が求められますよ、という点ははっきり言われていますね。ここまでBLSの敷居が下がって、市民がバイスタンダーとして積極的にCPRをして、救命成功がニュースになる時代、医療者が市民と同じ水準のCPR技術でいいとは思いません。

市民救助者は、無我夢中であってもいいと思いますが、医療者は「質の高いCPR」を意識して、コントロールしていきたいものです。

また、これもこのブログでも何度も取り上げている点ですが、世界の蘇生シーンをリードするのは看護師である、という点が今回、初めて活字になったという点が嬉しかったですね。

以前、アメリカ心臓協会(AHA)のナショナル・ファカルティ・オリエンテーションに参加させてもらったことがありますが、AHAという巨大組織のECC(救急心血管治療と心肺蘇生)部門や教育部門を取り仕切っているのは、医師ではなく、看護師でした。

Mary Fran Hazinski女史や、Jo Haag女史は有名ですね。

あの世界の蘇生シーンをリードするAHAのガイドライン改訂の責任者はナースだった、って知ってました?

蘇生科学といったら、私たち日本の看護師は医師の専門領域と考えがちですが、世界を見たら決してそうではないです。

たとえば、の話として、俗語ではありますが、「脳科学者」という言葉が広く知られています。

マスコミに登場する脳科学者たちの多くは医師(医師免許を持っていない)ではありません。脳を語ると言ったら医師でないといけないというイメージもあるかもしれませんが、現実的には生物学や心理学、情報工学分野出身の研究者だったりします。(余談ですが、医学博士であっても非医師が多いです。もちろん、看護師で医学博士の人もたくさんいます)

そういった意味で、今後は、AHAやERC(ヨーロッパ蘇生協議会)のように、看護学をバックグラウンドとしたナースの蘇生科学者というのが出てきてもいいんじゃない? と思います。

蘇生科学者とは名乗ってはいませんが、世界の蘇生シーンで活躍する日本人ナースも実際にはいる点は、先のエキスパートナース誌でも触れられていました。

さて、今回の記事では取り上げられていませんでしたが、米国版やヨーロッパ版のガイドラインでは、病院内心停止というのが大きなキーワードになっています。

院内での心停止は、心室細動による突然のものは多くない、「急」変ではなく、段階的に悪化していくものなんだ、だから予兆に気づいて防げ!、ということが強く打ち出されています。

入院患者の変化に気づけるのは、病棟勤務の看護師をおいて他にありません。

今後はこのような視点でガイドライン改訂を紐解くような解説記事が出てくるんじゃないのかなと期待しています。

そんなわけで、5年ぶりの蘇生ガイドライン改訂。なにが変わった、いう末端的な話ではなく、看護師としてこのガイドライン改訂の意義をどう捉えるかという視点でもぜひ、この先の動向を注目してほしいと思います。

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