オペ室での急変対応シミュレーション

先日、勤務先の手術室で急変対応シミュレーションを行いました。
 
大腿骨頸部骨折後の患者。
 
抜管後、さてモニター外してベッド移動しようかというときに、なにやら様子がヘン。頻脈になって酸素飽和度も低下。
 
どうしたんだろう? と思っているうちに、なぜかいきなりVF。
 
そこにいるのは麻酔科医と看護師2名だけ。
 
さあ、どうしますか?
 
というシナリオ。
 
ハートシムをオペ台に寝かせて、心電図波形をサイナス・タキからVF、さらにはサイナス・タキのPEAに変化させて、オペ室ナースに動いてもらいました。
 
ナースステーションには別に3名のナースがいて、計ナース5名プラス麻酔科医1名で対応する展開。
 
役割がない人には、オブザーバーとして、それぞれのスタッフの動きを追いかけて観察してもらい、後でみんなでデブリーフィング。
 
 
すごく勉強になりました。
 
オペ室スタッフには、私がBLSを仕込んでいますので、理想的な状況では動けるようになっています。
 
しかしこのようなリアルな状況だと、やはり勝手が違くて中々うまくいかない。
 
 
手動式の除細動器の電源コードが絡まってすぐに持ち出せないとか、オペ室内は配線だらけで除細動器をベッドサイドに近づけられない、麻酔科に言われた薬がたまたまカートになくて、どこに取りに行こう? というトラブルがあったりとリアルな問題点が次々と浮き彫りになっていきました。
 
手動の除細動器の使い方がわからないとか、アルゴリズムを知らない、というのはこの際は問題にせず、今回のメインテーマにしたのはチームダイナミクス。
 
中でも、
 
・クローズドループコミュニケーション
・明確な指示
・明確な役割分担
・自己の限界の認識
・建設的介入
 
あたりをポイントとして、デブリーフィングを行っていきました。
 
そうしたらみんな気づいているんですよね。
 
今回、VFの発生から最初の除細動まで8分もかかってしまった理由がノンテクニカルスキルに起因しているってことが。
 
私が誘導しなくても、自らいろいろ語ってくれました。
 
「ナースステーションに行って『急変です!』しか言わなかったから、人は来たけど除細動器を持ってくる人が誰もいなかった」
 
「除細動器を持ってきたけど、リーダーは薬剤準備の指示を出していたから、「持ってきました!」って言い出せなかった」
 
たいていのトラブルがチームダイナミクスのポイントで説明できる点ばかり。
 
仮にアルゴリズムなんて知らなくても、チーム蘇生の概念さえわかっていれば、そうとうスムーズに行くということは誰もが納得して終えることができました。
 
 
一般的にACLSは蘇生を成功させるためのツールの一つとしてチームダイナミクスを用い、ノンテクニカルスキルのトレーニングを行います。
 
しかし、ナースにとってはもしかしたらアルゴリズムなんかより、このノンテクニカルスキルトレーニングコースとしての意味の方が大きいかも知れないと思いました。
 
急変対応という題材を使って、ノンテクニカルスキルトレーニングを行う。ACLSをそう割り切っちゃっても良いかも。
 
最近、病院の安全対策室から、ノンテクニカルスキル・トレーニングのいい教材はない? と相談されているのですが、ACLSからこの部分だけを切り抜いて、こんなシミュレーション訓練を行うのがかなり有効なのでは? と感じ、ACLSの新しい可能性を感じ始めた今日この頃です。


 

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コメント

  1. ままなーす より:

    お久しぶりです。
    めっつえんばーむさん、さすがです。
    手術室での急変シュミレーション、私たちも取り組みを考え中ですが、とても参考になりました。
     
    これからもがんばってください。

  2. うみがめ より:

    新着記事があり、とってもうれしくて思わず書き込みしました。
     
    私がオペ室に配属になり1年ちょっとです、移動で行ったので全くの新人とは教育も少しだけハードル高くて、何も分からず毎日目が泳いでいました。藁をもつかむ思いで情報を検索していたときに出会ったページ、忘れもしないエピネフリン・・初心者にも分かりやすい内容で、食い入るように読ませていただきました。本当に楽しく、ためになる内容で助けられました。有難うございます。
    今後も楽しみにしています。
     
    ところで、上記のシュミレーション、取り組みシナリオがもっと具体的に知りたいです。可能なら教えてください。
     
     
     

  3. 管理人 より:

    シナリオは本文中に書いたのでほぼ全部です。みんな一応BLSとか急変対応の基本は知識としては知っているので、あえて具体的な指示は出さずに、状況だけを口頭で伝えてイメージしてもらった後で、「はい、スタート!」という感じで促しました。

  4. まいこ より:

    こんにちは。いつも無言で(書き込みせず)拝見させていただいてます。
    メッツエン様にまじめに素人質問させていただいてもいいですか?
    先日、人工呼吸器使用中の患者様にDCをかけるシーンがあり、
    先輩ナースに呼吸器と挿管チューブを外すように指示されました。
    私は閉鎖回路状態だから酸素に引火する可能性はないので
    外す必要はないかと思ったのですが
    実際の現場でどのようにされていますか?教えてください。