手術室で「看護」の教育をしていますか?

久々にオペ室ネタです。

4月からフレッシュな新人ナースが入ってきて、院内の異動者とあわせると8名の新人さんたちでオペ室はあふれかえっています。

そんな新人さんたちと一緒にオペにつくことも少なくないのですが、ここ最近は完全に教育担当から外れているので、新人さんたちの進捗状況もイマイチ把握出てきておらず、戸惑う場面がしばしば。

そこで改めて思ったのは、新人教育として、挿管介助とかA-Line介助、とかの到達目標はあってチェックリストもしっかり作られているのですが、ナースとしての総合力に関する教育とか評価基準がないんだなという点でした。

いずれも部分的なトレーニング、つまり臨床場面の一部を切り取ったものでしかなくて、例えば外回り業務といった一連の流れの中での実行性というか、パフォーマンスは必ずしも鍛えられていない、ということです。

挿管介助ができて、抜管介助ができて、対極板のシールが貼れて、、、

一つ一つができたとしても、きっと手術の外回り業務はできません。

まあ、当たり前の話なんですが、一つ一つのパーシャル・タスクを積み重ねて、手術の外回り業務というパフォーマンスに仕上げるための、間をつなぐものが教育システムの中にないというか。

これは新人さんたちの目標の立て方にも端的に現れてきます。

今日はV-Lineの介助を完璧にできるようにしたいです、とか場面を切り取った形ので目標はよくあげてくるのですが、そんなこと以前に入室時に患者さんへの声かけや非言語的コミュニケーションがめちゃくちゃだったり。

モニターを装着するときにどんな風に説明しながらやってくの?

患者さんに服を脱いでもらうときの配慮の仕方。

こんなことはチェックリストには載っていないので、教育システムとは別の部分で自然と身につけていくしかない現状。

でも、私たちの仕事って「看護」なんですよね。

「診療の補助」という医師の助手的な業務に関してのみチェックリストを作ってきっちり教えて、ってやってます。でも、そんなことより看護の視点だとか看護介入を教えるべきだと思うけど、現在の教育カリキュラム・システムの中にはまったくない。

かつて自分も手術室の教育プログラム策定には関わってきて、多分に意見もしていたのですが、教育を離れた今になって気付いたこと、でもあります。

手術室看護師の場合、最初のうちはどうしても器械出しを含めた技術習得が中心となって「看護」を実感できる場面が少なくて、バーンアウトしたり、離職したりということが多い職場です。

だからこそ、診療補助のテクニカル・スキルのトレーニングだけではなく、看護としてのノン・テクニカルな部分も教育システムとして強調して意識させるべきじゃないかと思いました。

ただ、具体的にそれをどうするか?

それは、インストラクショナル・デザインを学ぶ者としての私の今後の課題です。

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コメント

  1. ままなーす より:

    めっつぇんばーむ様、
     
    ちょうど手術室の看護教育について、本年度私の課題となっており、運命を感じながらよみました!
    さすがです!
    私は中堅ナースのロールモデルとしてのあり方、なかなか文章にしにくい経験からくる知みたいなものを、どうやって評価していくのかを考えたいと思っているところです。
    看護を教えていますか・・・
    ぐさっとささりました。
     
    これからもがんばってください。
     

  2. Nsマン より:

    いつも拝見させていただいています。
     
     今回の内容は少し考えさせられるところがあります。
     
     手術室看護師の仕事は、「百聞は一見に如かず」ということがよくあります。とりあえず実践をしてみて、それを振り返ってその根拠や方法の意味を考えてみることが多いと思います。
     
    最初からコミュニケーションのみを学んだところで、手術室に必要な知識や技術を身につけることはできないと思います。経験を積ませることによってその時その時の必要なコミュニケーションが獲得できるのではないでしょうか。
     
     「モニター装着時の説明の仕方」や「患者さんに服を脱いでもらうときの配慮の仕方」など
    をチェックリストに入れ始めれば、チェックのランが3倍くらい多くなると思います。最終的には「ローカの歩き方」や「勤務場に到着の時間」なども入れていきたいと思っているのですか?
     
     「手術室看護師の必要性」という所をもう少し考えたほうがいいと思います。ノン・テクニカルはあくまでもノン・テクニカルです。その部分を強調させて教え、チェック項目に入れることは新人の離職やバーンアウトを余計に増やし、窮屈感が増すばかりだと思います。
     

  3. 管理人 より:

    Nsマンさん、ご意見ありがとうございます。そうなんですよね。いちいちチェックリストにするようなものでもないと思います。
     
    ただ、その他のチェックリストがあまりに立派なので、そっちにばかり目が行く傾向が気になるんです。
     
    このチェックリストを埋めれば一人前になれる! みたいな。
     
    手術室看護という大枠の中で、チェックリストで表現されているものは基本かもしれないけど、看護としての本筋直球ではないかも、といった位置づけがわかりにくくなってるなという感想でした。

  4. ペアン より:

    私は今年の4月からオペ室に配属になりました。
    希望は病棟です。
     
    自分がオペ室にいくとは考えていませんでした。今は器械を覚えたり術式を覚えたり…そればっかりです。
     
    オペ室に看護が見えなくて異動したい気持ちでいっぱいです。オペ室にも看護がある。というのは言われるのですが自分がやりたかった看護ではないんです。こんな気持ちのまま働くのが辛いです。看護から離れてる気がして…

  5. 管理人 より:

    向く向かないはあります。
     
    幸いまだ売り手市場なので、異動希望を出す、だめなら転職というのもありと思います。自分の人生、自分で作っていく。予期せぬ流れに身を任せて道が開ける可能性も実際あって私もそれに乗ったクチですが、乗る乗らないも人生の選択。
     
    どうか、無理なさらぬよう、、、

  6. ミッキー より:

    こんにちは。
     手術室で、2年目のプリセプターチームの一員として関わっています。
     
     2年目となると手術自体の指導が多くなるなか、なかなかチェックリスト等参考になる資料がありません。 
     
     何かよいアドバイスあったらよろしくお願いします。

  7. ふじ より:

    はじめまして。
    私もこの春、新卒で手術部配属となりました。
     
    学校ではほとんど触れる機会のなかった手術室と言う特殊な空間と様々な器械・手技におろおろしつつ、なんとか7月に辿りつきました。
    4月当初より先輩方から手術室にも看護があるのよ、と言われていましたがその頃はそれを見つける余裕もなくただただ毎日必死でした。
    今はほんの少し自身を顧みる余裕ができたせいか、手術室の中にある看護というものを見出すことができるようになってきたように思います。
    ご指導に加えて、新人が自身の力で看護を見出す過程を見守っていただけると幸いです。

  8. ぼす より:

    はじめまして。4月からオペ室で働き始めた者です。
    先日、外回りのことで、先輩からがつんと指摘されて、落ち込んでいたところ、この記事にたどり着きました。
    私が指摘されたのも、やはり声掛けや、患者に対する責任感など、ノン・テクニカルスキルの部分でした。
    一緒にオペについてくれる先輩ごとに考え方が違い、また技術でのチェック項目がない分、難しさを感じます。
    経験によって習得していくべき部分なのだとも思いますが、なにか項目を挙げていただけると、ひとつ一つの作業で手いっぱいな中でも、注意していけるのかな。と感じます。