骨折の観血的整復固定術の続きと見せかけて、実は今日はぜんぜん関係ない話です。(←いろいろな方からコメントを頂いて、どうも勉強不足が判明。もうちょっと資料を揃えないと続きが書けそうにないので。。。。)
手術室にいると、外科系のすべての診療科とお付き合いしていくわけですけど、なかでもちょっと特殊なのが『歯科口腔外科』です。なにが特殊かって、同じメスを持つ立場でも口腔外科医は「医科の医師」ではなく、歯科医師免許で仕事をしているという点。
(補足ですけど、医師免許と歯科医師免許は別物です。医師免許は医学部医学科、歯科医師免許は歯学部歯学科でそれぞれ6年間勉強しないと取れません。たまにダブルライセンスのDr.もいますが、編入したとしても10年は必要)
学生の時分、保助看法の勉強をしていたとき「看護婦は医師または歯科医師の指示の下…」なんて文字を見たとき、歯科医の下で働くのは歯科衛生士じゃん、看護婦がなにをするの? なんて思ったものですが、まさかその自分が歯科医師と一緒に仕事をするようになるとは思いもしませんでした。
歯医者さんといえば、どうしてもクリニックで歯を削っているイメージがあります。ところが、ふつうの総合病院の普通の手術室で、こんな切った貼ったの仕事をしている歯医者さんもいるんだ、と正直驚きでした。
歯科医の中でも口腔外科を専門にやっている人はやはり特殊みたいで、歯科医師の間でも口腔外科医は「外科の先生」と言って、ちょっと区別しているような雰囲気もあるようです。
■ 歯科口腔外科の手術
口腔外科領域で歯科医師はどんな手術をしているのかというと、、、
● 抜歯(埋伏歯等)
● 嚢胞摘出
● 唾石摘出
● 舌腫瘍切除
● 顎下腺摘出
● 下顎骨観血的整復固定術
● 頸部リンパ節廓清
● 消炎術
ってなところです。ときどき形成外科とコラボして、美容外科領域の下顎・上顎骨切術なんかも行なっていますが、おおむねうちではこんな感じ。
基本は口腔内の手術になるのですが、顎下腺摘出や観整固などは顔面皮膚にメスを入れ、口腔外からアプローチすることもありますし、頸部リンパ節廓清などは下顎から首にかけてかなり長い皮切をして、ガバッとキズを開くかなりダイナミックなオペです。
私が初めて口腔外科のリンパ節廓清手術を見たときは、「え、ホントにいいの?? 歯医者さんがそんなことして!」と思ってしまったほど。このとき、私の歯医者さんのイメージはガラリと変りました(笑)
口腔外科は医科と歯科の中間領域に位置して、耳鼻咽喉科や形成外科とかぶる部分ともなっています。顎下腺手術などは耳鼻科でやることもありますし、最初にかかった科がどこかという問題にもなるんでしょうね。下顎骨折は噛み合わせ(咬合)の問題から歯科口腔外科の独壇場がふつうみたいです。
■ 麻酔を掛けたり、腸骨を切ったり、、、
歯科医師は口腔内の治療に関することはすべて歯科医師免許のもとに行えることになっています。口腔内治療に必要であれば全身麻酔を掛けることもできるし、下顎骨折等で骨移植が必要とあらば腸骨から採骨することもOK。
歯医者さんが腰にメスを入れる、、、なんだか不思議な気もしますが、まあとにかく法律的にはそういうことになっています。
で、実際に歯学部には歯科麻酔科という診療科(講座)がありますし、歯科医師免許で病理解剖をやっている人もいるし、歯学部は口周辺の解剖生理・病態しか勉強しないと思ったら大間違い。
実は私が学生時代に教わった解剖学、生理学、病理学の先生は歯医者さんでした。(近くに歯科大があってそこから外部講師として来てました。生理学の先生は歯学部在籍の医師免許保持者でしたが)医学部生からしたら、「浅い」のかもしれませんが、いちおう全身の解剖生理・病態はやっているみたいです。
医師の組織である病院の中に、ほんの数名だけいる歯医者さん。
育った教育環境が違うせいなのかわかりませんが、他科医と比べてとってもジェントル。ローテートで2年おきくらいにメンバーは変るのですが、どの人もとっても親切で、ナースに対する態度も非常に丁寧。いい人たちなんですよねぇ。そういった意味でも口腔外科は特殊。
うちの病院も、歯科口腔外科外来には歯科衛生士さんが数名いるらしいです。でもオペの手伝いは決してせず、手術室でのオペ介助は我々看護師が行なっています。法律的には歯科衛生士がオペ介助に入ってもいいはずですけど、例えば歯科手術しかしないような歯科大学の手術室では衛生士さんがやってるんでしょうかね?
スイマセン、最後は雑談風に終わらせてしまいました。
コメント
うちの病院も医学部と歯学部の手術がありあます。本来は別々にやっていたのですが、合併して、今はおんなじ手術室でやってます。
介助についていて思うのは、器械の特殊なこと!外科といえば、共通の器械も多数ありますが、歯学部でしか使わない器械というのが多々あって、最初は覚えるのに苦労しました。しかし、歯学部の先生は本当にいい人が多いですよね。前日に、次の日が歯学部の手術の介助だったら、ほっとします。なんか、なんて内容がない話ですが、つい共感したんで書いてみました。これからも、たくさんの情報を楽しみにしています。
れんさん、コメントありがとうございました。やっぱり口腔外科の先生方の気質って、共通なものがあるんでしょうかね。偉ぶらないというか謙虚というか。
口腔外科の器械、うちはそんな術式の種類がないから、器械セットは基本が1種類と、抜歯用の単品セット、頸部皮切セット、あと骨折セットくらいなもので、まあそんな複雑じゃないです。でも歯学部のオペ室というと、もっと特殊なモノがいっぱいあるんだろうなぁ。
うちは、口腔外コンテナ・抜歯コンテナ・のうほうコンテナ・骨きりコンテナがあります。歯学部特有の手術といえば、インプラント形成、こんかんじゅうてん、でしょうか。あとは、別滅菌でもろもろ器械があります。器械が多くても、先生がいい人なんで、いろいろ教えてくれるのでいい雰囲気で手術がすすみますけどね・・。
初めまして。4月からオペ室勤務となったおばさんNSです。毎回本当に勉強になり感謝しています。この歳になってまさか!!と思いつつも、オペ室の楽しさ(?)に少しづつはまり始めているところです。なかなか思うように器械も出せず、しかしながらその中でも、ホンの些細なことでもいいから学んでいこうと貪欲に毎日を過ごしています。器械だしに加え最近は時々外回りが入り始めていて、また違った楽しさを味わっています。まだまだ4ヶ月しか経っておらず、今までの看護師の職歴から比べればまだまだひよっこで大きなことを言える立場ではありませんが、新人ORとしてやっていこうと思います。これからもたくさん勉強させてくださいね。
こんにちわ。また、疑問が浮かびましたのでご意見をいただこうと書き込みします。それぞれの施設では、手術介助のマニュアルがあると思いますが、どんな形式でしょうか?新人のときは、マニュアルはともに生活するくらいの必要性があり、本当になかったら不安になるものでした。うちの、マニュアルは文字で手術の進行とともに、必要な機械・外回り看護師の動きが書いてるんですが、すべて文字です。個人的な意見ですが、手術室のマニュアルはすごい大切だと思うんです。新人のころは器械の名前なんて、まったくイメージができず、また普段は滅菌してるので、簡単には現物がみれなかったり、さわれなかったり。もちろん、基本的な外科の器械などは未滅菌であったり、写真で掲載されていたりしますが、特殊な数が少ない機械となるとそうはいきません。そこで、今回、器械の写真や、術中の動きなど動画を盛り込んだマニュアルを作成しようということになりました。DVDなどにマニュアルをいれようとしています。研究でやってるんですが、他の施設ではどのようなマニュアルを使用しているんでしょうか?ご意見お願いします。
はじめまして、ぴよのすけさん。
病棟からすると完全な異世界にも思えるオペ室へようこそ!(^^)
最初のうちは覚えることだらけかもしれませんが、落ち着いてきた頃には、病棟の視点とオペ室の視点が融合してきっとすばらしい看護が展開できるようになるはず。職場の他の人たちのためにも、どうぞがんばって下さいね。
れんさん、そういえば口腔外科だとインプラントっていうのもあったんですね。うちではまったく扱っていないので知りませんでしたが、歯科も専門にやっていると、それこそ幅広いんでしょうね。ちなみに来週、うちの口腔外科で「植皮」というのが入ってます。植皮は形成外科でも皮膚科でも整形外科でもやってますが、口外の先生がやるのを見るのははじめて。いったいどんなふうにやるんだろうと興味津々です。
それと手術マニュアルの話ですが、せっかくなので、今週末に私が作っているマニュアルを例に少し話を膨らませて書いてみようかなと思っています。日曜の夜か週明けくらいにまたのぞいてみてくださいね。