疑問:医用画像の著作権・倫理規定

今日は皆さんにお聞きしたい素朴な疑問があっての書き込みです。
医療系の話を書いていると、例えば心電図の波形などを画像として貼り付けたい、なんてこともあるわけですけど、それって法的に、倫理的にいいのでしょうか?
 
本や雑誌などで実際の患者さん心電図波形が載ってたりしますが、あれってその患者さんに許可を取って掲載しているのかな? 例えば何万人に一人というような特殊な症例だと、個人が特定されてしまう可能性があるので問題になるかもしれないけど、ありふれた不整脈だったら関係ない?
 
著作権法でいう著作物の定義は、
 
「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」
 
ってことは、無機質な心電図波形は著作権法的には問題はなさそう。
 
だったら本から心電図波形の部分を勝手にコピーして使っても大丈夫?
 
 
 
X線写真の使用はどうだろう? 写真といえば写真だけど、そこに肖像権はある?
ホームページ上に無造作に貼られているような写真であっても、そこに著作権はしっかりあるらしい。
 
X線も同じ「写真」だとしたら、それはカメラマン(= 臨床放射線技師)の著作物??
 
 
 
心電図やX線写真とか、医療画像の二次利用に関して、なにか倫理規定とか判例とかあるんでしょうか??
 
ご存じの方、いましたら教えていただけるとうれしいです。


 

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コメント

  1. Rico より:

    難しいことはよくわかりませんが、長女が長期間腹痛を訴え続けたときに、レントゲンを撮りました。
    (原因と病名は伏せさせてください。)
    正常な方と長女のレントゲン写真の差を見せて頂いたときに、先生がお名前の部分を付箋のようなもので隠されて、見せてくださいました。
     
    写真自体はわかりませんが、そのレントゲン写真が誰のものであるかを、第三者に知らせることは違反のようなイメージを受けましたよ。

  2. 松本 より:

    倫理規定についてはわかりませんが、著作権について一言(^^;)。
     
    レントゲンの画像は、著作物か否かといえば、間違いなく著作物です。
     
    それでは、その著作物の権利を持つのは誰か。
     
    A病院に勤務する医師Bの指示に基づいてレントゲン技師Cが患者Dの体を撮影したものを看護師Eが研究論文に使用する場合、誰がどういう権利を持っているのか否かということだと思います。
     
    著作財産権という意味では、A病院の方針にしたがって撮影された職務著作であるため、複製権などはA病院が持ち、著作者人格権についてはレントゲン技師Cが権利を主張できます。
     
    問題は、この画像を学術論文などに転用した場合、どういう制約を受けるかということです。
    これは著作権法30~50条の規定にある通り、学術的な利用については使用可能です。もちろん、第48条「次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。」の規定によって、明示しなければなりません。
     
    学術的な目的で使用する場合、出所を明示すれば、著作権法上の問題は生じません。
    だから、看護師Eは著作権法上、明示すれば無断で使用しても良いはずです。
     
    医療系の論文の慣習は知りませんが、おそらく画像の下に、「○○病院 山田太郎撮影 2007年10月15日」などと記載するのではないでしょうか。
     
    しかし、おそらく、医療機関には当然に守秘義務がつきまとうので、倫理規定に沿って、患者さんや関係者の承諾を得ることを要求されているのでしょう。著作権法上の問題はクリアであっても、倫理上の問題からNGということだと思います。
     
    なお、めっつぇんばーむさんは「無機質な心電図波形は著作物ではない」と書かれていますが、これもやはり著作物だと思います。(ここらへんの具体的な例はまだ争われたことがないでしょうから、あくまで私の裁判経験からの解釈です)
     

  3. 管理人 より:

    松本さん、どうもありがとうございました!
    実は直接メールをして聞いちゃおうかななんて思っていたんですよ。
     
    明解なお答え、ありがとうございました。
     
    X線写真については感覚的にもわかるのですが、心電図が著作物であるというロジックが私には理解できません。確かに電極を貼る位置で波形は変わってきますし、連続して流れているうちのどの場面でプリントアウトするかという点で、「創作的な表現」と言えなくもありません。
     
    なら電極を貼った人が著作者人格権を持つのか、プリントアウトをした人なのか?
     
    でもその波形自体を作りだしているのは患者の心筋であって、でもそれは創作的表現ではなくただの自然の事象。患者本人もきっとそこに表現という意志はないでしょう。だったら??
     
    著作権については興味を持って何冊も本を読んでいますが、医療系の視点で書かれたものはお目に掛かったことがなく、考えれば考えるほどわけわからなくなってきます。
     
    医師だったら学会発表とかでこういうシチュエーションは日常茶飯事だと思うのですが、そこまで細かいことは考えてないんだろうなぁ。
     
    Ricoさん、倫理的な側面からのアドバイスありがとうございました。倫理的には個人が特定されないような処理が最低限必要だと思いますが、実際どの程度の手続きが必要なのか、、、倫理って難しいです。

  4. 松本 より:

    こんばんは。
     
    私のあの事件(スメルゲット事件)で、一審敗訴となった時(商品画像は著作物とはいえない)、「じゃ、あれはどうなんだ?」、「これはどうなんだ?」と、いろんなケースを考えて、何をどう考えても納得がいかず、控訴したら、知財高裁の判決理由の中で「たとえ偶然の産物であったとしても、それを記録した者に何らかの特徴が見られれば著作物である」という記述がありました。
     
    これを同様に解釈すると、例えそれが単なる波形の記録であったとしても、私は著作物であると解釈するのです。
     
    >なら電極を貼った人が著作者人格権を持つのか、プリントアウトをした人なのか?
     
    これは共同で作業した著作物ともいえます。つまり、二人が「この波形を記録するんだ」という意思を持って作ったのであれば、共同の著作です。
     
    >でもその波形自体を作りだしているのは患者の心筋であって、でもそれは創作的表現ではなくただの自然の事象。患者本人もきっとそこに表現という意志はないでしょう。だったら??
     
    う~ん、確かに難しい(^^;)。
    でも、モデルさんを撮影した写真は、撮影者が著作権者であって、モデルさんは著作権者ではありませんよね?
     
    心筋が動いていることそのものは著作物ではありません。しかし、その動きや音を記録したものは、ビデオ・録音テープ・機械で記録しようという意思がある以上は著作物といえると思います。
     

  5. 管理人 より:

    松本さん、結局のところ著作権法自体が現代事情にそぐわないという問題に落ち着きそうですね。インターネット上の著作権についてもいろいろ議論されていますし。
     
    > モデルさんを撮影した写真は、撮影者が著作権者であって、モデルさんは著作権者ではありませんよね?
     
    この場合は著作ではなく肖像権の問題になると思いますが、レントゲン写真の骨格像に肖像権は発生するのでしょうか??
     
    スミマセン、つまらない突っ込みで(笑)