ゼネラリストとしての看護師

『ちょっと話は逸れますが、看護師の専門性という話をするときにいつも引っかかることがありまして、それは看護師というのは専門ではなく、汎用を売りとした職業ではないのか、と思うことがあるんです。これについてはちょっと長くなりそうなので、今週末にでも新しい記事として改めて書かせてもらおうと思います。』

なんて話を先日コメント欄に書かせてもらいました。
その続きです。

看護師としてのキャリアアップだとかいう話になると、必ず言われるのが「専門性を高める」という点です。

その道のエキスパート、スペシャリストになれ! という方向性ですが、ネコも杓子も「専門性をアップ」だなんて言われると、ヘンクツな私は、ホントにそれでいいの?? と竅った目で考えてしまいます。

そもそも看護の仕事を考えると、専門というよりは何でも屋的な汎用性が求められる業務なのではないかと思うのです。

考えてもみてください。看護師の独占業務から独立していったコメディカル資格の数々を。

臨床検査技師、理学療法士、言語聴覚士、臨床工学技師、救急救命士などなど。もともとは医師の他は、看護婦だけでほぼ成り立っていた診療業務のうち、専門性が高い部分は次々と独立していって、最後に残ったのが今の看護師の業務です。

極端にいうと診療補助のうち、残された専門性が低い部分こそが、現代の看護師の業務とは言えないでしょうか?

なんて書くと刺激的すぎるかもしれませんが、少なくとも、専門ばかり追求しすぎると取りこぼす部分が出てきます。でも、それらも立派な看護師の仕事だよ、と言いたいのです。


専門性を究めることばかりが良いことのように言われがちですが、非専門性(=汎用性)が悪いわけではありません。

ビジネスなどでも、スペシャリストとゼネラリストという分け方がありますが、スペシャリストばかりでは会社全体としては仕事が進みませんし、絶対にゼネラリストの存在は必要です。

スペシャリスト集団で構成される病院組織の中で、ゼネラリストとして働くとしたら、どう考えても看護師以外はあり得ません。

何でも屋というと聞こえは悪いですが、看護師の仕事はそういうものであっても良いと思っています。法律的にもそうなのだし。

看護師が汎用性を捨てて、専門に走ったら、本来の自己存在を否定することにもなるんじゃない? と私は思っています。

最終的にはバランスなんでしょうけど。

業界全体として看護師の専門性を高める方向に向かっているようですが、その先にあるものはなんなのでしょう?

ホントに今の方向性でいいのかなぁ。

そんなことを考えつつ、私は自分の身の振り方を考えています。

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コメント

  1. チロ より:

     いつも、このサイトを見ると刺激されますね~。
     専門性を高めることに対しては、私はいいことではあると思います。ただ、全員がその方向に行く必要はないとは思います。オールマイティに仕事も出来て、どこでも働ける人はとても重要です。専門性がすべてではないと思います。(ここで言う専門性は、看護の中の細分化された専門性であって、大きく見た看護師としての専門性ではありません)
     
     ただ、看護師の仕事を、専門職というためには、介護や他の職種との差を認めさせる何かは欲しいと思います。抽象的でなく、科学的な根拠が欲しいんですよね。看護師が、自分の行為に根拠と責任を持つこと。それを専門性を得た、看護師の方々は実践していいるのではないでしょうか?そんなの当たり前と言われるとおもいますが、実際の現場ではすべて根拠と責任を持っていると言い切れないのではないでしょうか。
     
    とまぁ書きましたが、結局スペシャリストの看護師もゼネラリストの看護師も必要ですよね。そして、なんであれ、看護師としての専門職の意識を育てていくことに、必要性を感じます。
     
    私事ですが、手術室に来て1年。やっと手術室看護の面白さがわかってきました。このサイトもメチャメチャ参考にしてますのでこれからも、楽しみにしてますね!
     

  2. 管理人 より:

    専門化が進むことで気懸かりな点がふたつあります。
     
    1.専門バカになる(専門外のことには無関心)
    2.プライドが高くなり、専門性が低い業務を軽く見るようになる
     
    こんな事態にならない程度に専門性を高めていくのは大賛成です。
    オペ室業務の場合、本人が望まなくともすでに専門性が強すぎるので、この傾向は多分にあるんですよね。その点、私も心に刻んでおきたいと思います。
     
    それとこの先は、ただの「言葉」の問題なので、あまり気にせずに読んでいただきたいのですが、専門職という言葉は実は深い歴史背景をもった言葉なんですよ。現代ではとかく気軽に使われる言葉ですが、本来の専門職というのは非常に限られた職種のことを指していました。歴史的に、専門職と呼べるのは医師、法曹(弁護士・検事)、僧職者だけです。定義的には、(ちょっと難しい表現ですけど)その仕事の評価は他者が行なうのではなく自己の判断だけで完結する他者が入り込む余地のない職業ということです。
     
    今の日本では、独立開業できる国家資格で働いている人のことを指す場合が多いようです。看護師の仕事を専門職と言っていいのかどうか、グレーゾーンな部分はある気がします。専門知識を持って国家資格で働いているという意味では明らかに「専門」ですけど、専門職と言ってしまうとちょっと引っかかる部分があるんです。スイマセン、つまらないこだわりで。
     
    もしかすると、専門職だから○○であるべき、という思考様式からはじめると煮詰まって定義に立ち返ったとき論理が自己破綻する可能性があるので、なぜ看護師の仕事に根拠と責任の明示が必要かという点、例えば「安全性」とかそういったあたりから考え進めていく方が、看護の仕事を考える上ではいいのかなという気がします。(抽象的でわかりにくい書き方でごめんなさい)根拠と責任と誇りを持って働くべき、という点は同感です。