ここ数日、特定看護師をめぐる報道をよく目にしますね。
医師がしている診断や治療の一部ができる「特定看護師」の導入を議論してきた厚生労働省は7日、作業部会で制度の原案を示した。法律を改正し、床ずれの治療や脱水した場合の点滴開始の判断など「特定の医行為」を認証を受けた看護師ができるようにする。医療の質や患者の満足度の向上につながると期待される。
この日の部会で示された原案では、5年以上の実務経験がある看護師が、国指定の研修を受け、国の試験に受かると「特定能力認証」を受ける。医師の事前の指示に従えば、自らの判断でできるようになる。養成課程は、高齢者の慢性的な病気など幅広い2年と、皮膚・排泄(はいせつ)ケアなど分野を限る8カ月コースを想定している。
アメリカの医師と看護師の間的な医療職、ナース・プラクティショナーを参考に作られようとしている新制度。
皆さん、一部のエリートだけの話と思ってませんか?
実はいま原案化された「特定看護師」制度、なかなか意外な方向に話がまとまりつつあるようです。
私も勉強中の身で、それほど事情に明るいわけではありませんが、今のところ、特定看護師を名称独占にも業務独占にもしない、という方向性らしいのです。
業務独占というのは法律用語ですが、「免許を持った人意外は行ってはいけない」とするのが業務独占。
特定看護師ができる医療処置は、特定看護師だけの業務独占ではない。
つまり、特定看護師以外でも、現在はナースには認められていない医療処置を行なえるようになる、ということです。
それじゃ、単なるナースの業務拡大で、特定看護師は関係ないじゃん、という感じもしますが、まあ、事実上、そういうことのようです。
簡単にいうと、包括的指示があれば自分の判断で「特定行為」を行なえるのが特定看護師、包括的指示だけではなく具体的指示が必要なのが、一般看護師。
この図は厚生労働省のウェブで公開されている資料からの抜粋です。(PDFファイルです)
ふつうの看護師でも、病院施設として安全管理の取り決めがあり、包括的指示があり、医師に個別の状態を報告の上、具体的指示を受ければ特定行為を行なえるということがはっきりわかると思います。(もちろん看護師にその能力と経験が必要なのはいうまでもありません)
その「特定行為」の内容はこれから、領域ごとに検討・リストアップされていくようですが、現時点褥創のデブリなどが例として挙げられています。
結局のところ、いまはグレーゾーンとして施設ごとにナースに行なわせていた医行為に関して、制度化のうえ、容認しようというのが、今回の特定看護師制度制度新設の実体の模様。
日本にもついにナース・プラクティショナーが誕生!
というような華々しい話ではないようです。
特定看護師を進めている側としては、業務独占にしたいようで、現在大学院で行なわれている特定看護師教育では、それなりに高度な教育を始めています。しかし、さまざまな反対勢力があり、結果的にはグレーゾーンとして医行為を行なっている現状に新制度を当てはめて公認化する、という地味な形にまとまったとも聞きます。
結局、いま原案が示された特定看護師制度がスタートすると、いちばん影響を受けるのは今後誕生する少数精鋭の特定看護師の周辺ではなく、特定看護師とはまったく関係のない一般の臨床です。
事実上、ナースの業務拡大なのだから。
特定行為を意識した研修制度を作ることになりますし、ナースの仕事も増える。
だから、特定看護師制度新設は、特定看護師の問題ではなく、私たちナース全体の現実問題なのです。
今後の動きから目が離せません。
コメント
とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。
JNTEC受講しました!
http://plaza.umin.ac.jp/hein/kaiinngenntei.html
八田秀人サンが書かれてる医療行為も
いずれ一般救急看護師もできるようになるんですかねー?
こんなこと言っちゃいけないと思うけど、在宅医療の訪問ナースの方のいうことの方が、顔も見ないでカルテ記入するDr.より信頼がおける時があります、でも、闇雲に業務の拡大を行い人件費は維持と仕事ばかりが増え、ナースの責任や負担ばかり増やし肝心の手当がお粗末になっては困りますよね。