手術室の等身大の看護を表現する

去年の暮れからの怒濤の忙しさも一段落。
なんだか急に力が抜けてしまったみたいで、いまいち勢いに欠ける私ですが、すっかりこちらの方は放置状態でごめんなさい。
 
書き込み下さった皆さんには、少しずつお返事を返していきたいと思っています。
 
今は学士(看護学)取得のために入学した放送大学の後期試験期間の真っ最中です。先週の日曜日に2教科受験してきて、今週末も土日とも試験。一日にいくつも詰め込んでしまったから、計画的にテキスト読まなくちゃと思いつつ、このまま当日を迎えるんだろうなぁ。
 
それが終れば、大学は中退して、学位授与機構への学位申請に入ります。
卒論相当のレポート、これもそろそろ手を付けないと、、、
 
 
こんな無駄話ばかりかいていても仕方ないので、ちょっとばかりマジメな手術室看護ネタをひとつ。
 
このブログの永遠のテーマで、これまで何度も取り上げている「手術室に看護があるのか?」という話しの続きです。
 
病院の教育システムの中に、ケースレポート(事例検討)を課しているところが多いと思いますが、皆さんは手術室看護師として、どんなテーマを選びましたか?
 
手術室って患者さんとの関わり時間が短いから難しいよねぇ、、、
 
なーんて思いませんでしたか?
 
うちの病院では2年目の看護師に必須課題で、毎年そんな話になるのですが、私、思うんです。
 
そんな悩まなくたってオペ室でふだんしている等身大の「看護」を取り上げればいいのに、、、って。
 
皆さん、日々の仕事で「看護」、してますよね?
 
患者さんから、ありがとう、といわれることは少ないかも知れないけど、手術室の中で「やっぱり看護師がいないとダメじゃん」と思う場面が多々あると思いません?
 
 
そんな等身大の看護を、レポートで表現してくれたナースが私の身近な同僚でいたんです。
 
これまで何十年も、病棟看護を意識した「感動的な出来事」を追いかけ続けてきた当院オペ室のケースレポートの中で、ついにホントのオペ室看護を表現してくれた人が現れた! と私は驚くと同時にうれしかったです。
 
その人がどんなことを書いたのかというと、、、
 
 
特殊体位での手術で、患者本人からの訴えをもとに安楽な体位の固定に特に気を付けて関わったけど、術後、本人はケロッとしていて、体位についての術前に心配を口にしたことをすっかり忘れていたという事例。
 
不自然な体位になることをすごく気にしていて、もともとあった患部とは関係ない体の痛みが術後に増強したらどうしようとあんなに心配していたのに、術後訪問では、「え、そんなこと言いましたっけ、何でもないですよ」と軽く流されて、あの私の努力はいったい、、、と思ってしまったそうです。
 
命に関わる大きな手術で、医師たちは手術を成功させるために体位への妥協は許さなかった、そこを敢えて医師に意見してまで安楽さを確保したのに、、、
 
 
まあ、正直な思いだと思います。
 
でもこんなことってザラにありますよね。
患者さんが麻酔で意識を失った後のことはなにもわからないわけですから、そこで私たちがいくらどんなにがんばってもダイレクトには患者さんには伝わらない。
 
手術が終って目が覚めて、体位による苦痛がなにも出現せず、術前の心配さえも忘れてしまうというのは、考えてみれば私たちの実践した看護が大成功に終ったことの証拠とは言えないでしょうか?
 
見たことない人はイメージしずらいかもしれませんが、腹臥位とか側臥位、ジャックナイフ位なんて、場合によってはびっくりするような不自然な体位で長時間固定しますからね。
 
体位固定なんて、ふだんルーチンワーク的に何気なくやっていることですが、もしクッションでの除圧などをしないで、単純に側臥位でオペをしたらどうなるか、、、、
 
下手すると医師たちは、体位そっちのけでさっさと手洗いに行ってしまったりします。ナースたちの細やかな気遣いがあってこそ、患者さんはごく普通の状態で退室できると思うのです。
 
そんなふだんのオペ室の専門業務にあえて着目して書いてくれた、そのナースを私はすばらしいと思いました。
 
実際のところ、最初そういうテーマで書きたいとオペ室内の年輩格スタッフに相談したときは、あまり好ましい顔はされなかったようです。
 
なぜなら今まで歴代の2年生が書いてきたテーマとはずいぶん違うものだったから。
 
逆風の雰囲気の中、彼女は強い意志で「書きたい」と言い切りました。
 
ケースレポートといえば、術前訪問のこととか、麻酔導入前の20分くらいの関わりや、術後訪問のことを取り上げるのがメインでした。
 
でも考えて見れば、私たちの業務のほとんどは術中にあるわけです。そこに目を向けなかったというのは考えてみれば変な話です。
 
そう思いませんか?
 
彼女のそのレポートは、オペ室スタッフの意識の持ち方に大きな楔を打ってくれるものだったと思っています。
 
きっと彼女は手術室看護に真っ正面から向き合って、自信と誇りを持って取り組んでくれるいい看護婦さんになると信じてます。


 

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コメント

  1. tomo. より:

    患者さんと”会話”が出来なければフィードバックがなかったと考えるのはとても寂しいですよね。
    考えてみてください。病棟で意識のない患者さんのcareって大変ですよね?ORのnurseはいつもそういう状態だと思うんです。
    看護学校や看護師になりたての時って『患者の気持ちになって』と言う言葉を痛いほど聴きましたが、ORほど患者の気持ちになって考えなけれいけないところもないと思いました。痛いかどうかは患者の口から言葉として聞けません。今まで得た知識をフルに活用してどうすれば負担のない状態でさらに手術がスムーズに進むか。どういう体位が患者にとって術者にとって最適か。何処まで心配りが出来るか。とても難しいと思います。
     
    手術の後の患者さんの『そんなこと言ってましたっけ??』って言葉は最高の褒め言葉ですよ。だって、そんなこと忘れるくらい気にならない=上手に体位が取れ、患者さんの負担を最小限に出来た。から。
     
    『自分が手術を受ける身になって』忙しい毎日、毎回の手術でも業務に押される事なく最大限に『看護』を提供できれば、言葉では表されなくとも、私たちORnurseとしては上出来だと思いますが。

  2. 管理人 より:

    tomo.さん、こんばんは。遠いハワイから書き込みありがとうございました。(ネットの世界じゃ関係ない、か…)
     
    「最高のほめ言葉」、そういってもらえてうれしいです。
     
    この子のケースレポートを通して、ありがとうって言ってもらえなくても立派に看護してるじゃん、自信を持ちなよっていうメッセージをオペ室中に投げかけることになったと思うんです。
     
    どこでもそうかもしれませんが、希望してオペ室に来るナースはほとんどいません。みんな頭の中には病棟ナースとしての姿があったりするものです。
     
    病棟看護=看護という頭がどこかにあるものだから、オペ室看護の本当の面白さに気づかずにいつも、はやく病棟に出たいとぼやいている。なんだか残念なんですよね、そんな雰囲気が。
     
    これを聞いた若い子達が、手術室看護の本質に目を向けてくれたらいいなぁ、今後うちのオペ室で本当の手術室看護を極める人が出てきたらいいなぁ、なんて思いました。

  3. Tomo より:

    ALOHA~~です!!
    そうですよ!!!!褒める事は言葉でなければいけないことなんかないんです。
    いくら手順があっても、それに沿って手術の進行についていければいいかというものではないと思うし、それでは『看護した』ことにはならないと思います。どれだけ患者のことを知って何が最適かを判断できる。そしてもちろんそれを実行できる事が看護と思ってますし、手術室でもそれは同じ。
    『麻酔で話が出来ないから』『手術のときしか立ち会わないから』って患者の個別性が分からないとか言わないで欲しいです。その短い間にどれだけ観察できて情報を仕入れることが出来るかで患者さんにとって大きな違いが出てくると思います。
    なんだかうまくまとめる事が出来ず言い表しにくくて申し訳ないですが。。。。。。
     
    私は病棟に出た事がないので病棟看護の面白さ(と言うのでしょうか?)は知りません。でも、ORから出たいと思ったことはないです。だって面白い。もちろん手洗いも外回りも。コレをどうしてみんな分かってくれないのか・・・・・悲しいなぁ。ま、面白いというより『快感』ですかね。
    1年や2年じゃその面白さに気づくことは難しかったと思いますが、やればやるほど・・・と言う感じ。極める人もっといてもいいはずなのに。
    コレを語ると長くなるので・・・・
    まとまりのない文で申し訳ないですが、手術室看護極めましょう!!