PEAってなに? 心停止を理解する

看護師の皆さん、PEA(ピーイーエー)って知ってますか?

学校では教わらなかったかもしれませんが、臨床ではすごく重要な概念。

病院内の急変対応では、PEAを理解していなかったゆえの大失態(というより事故?)をよく耳にします。


無脈性電気活動 PEA


PEAは日本語でいうと無脈性電気活動。Pulseless Electrical Activity の頭文字、心停止の一種、です。

心電図上、なんらかの波形(電気活動)がありながら、脈拍がない状態。(心室細動と心室頻拍以外で)。

ざっくり言うと、サイナスリズムなのに、頸動脈で脈が触れないような状況です。


心停止というと、心臓が動かず、電気活動もまったくないフラットラインの状況、つまり 心静止 をイメージするかもしれません。

心臓が無秩序に震えて血液を駆出できない状態、つまり 心室細動 も心停止のひとつですが、さらにもうひとつの心停止の形態が 無脈性電気活動 PEA です。

PEA は心室細動や心室頻拍とは違って、不整脈の名前ではありません。

臨床状態、です。

心電図がなんであろうと縦軸(電圧)に振れがあって、頸動脈で脈拍が触れる程度の循環がない状態が PEA です。

波形はサイナスかもしれませんし、心房細動かもしれませんし、房室ブロックかもしれません。

なんであれモニター上の上下に振れる波形が出ているのに脈拍が触れない状態です。(まったく振れがないフラットな状態は心静止。また別のタイプの心停止です)

一般的に PEA は心臓の電気活動とは別の部分に原因があって、脈が触れない状態に陥っています。

例えば出血多量の場合


なぜ、PEAが起きるのか? わかりやすい例が、循環血液量減少でしょうか。出血多量などの場合です。

出血が止まらず、ショックが進行すると、血圧が下がっていって、やがて脈が触れなくなります。それは血管内の血液がないから。心臓がまだ動いているかもしれません。しかし、流れるべき血がないから脈が触れない。そんな状態です。

この場合、心電図は洞性頻脈になるケースが多いと思います。

除細動が無効なのはわかりますよね? 細動(心臓のけいれん)を起こしているわけではないからです。(除細動器はその名のとおり心室の細かい動きを検出して電気ショックで脱分極させて心臓の動きを止める道具です)

実際のところ、かすかに血流が残っている可能性もあります。補助循環という意味でもすぐに胸骨圧迫をすべきですが、CPRだけでは問題の根本解決にはなりません。

どうしたら救えるか? 原因を見つけて治療する

循環血液量減少による PEA から救うにはなにが必要か?

ボリュームが足りないわけですから、そう、輸液ですね。もしくは輸血。

そしてさらに出血であれば、出血源を見つけて止血処置が必要。

こんなように PEA にはなんらかの原因がありますから、それを特定して治療することが救命には必要です。

原因がわかるまではとにかく質の高いCPRを行ないます。

アドレナリン投与


先ほどの例のように、PEA も発見が早ければ(頸動脈で触知できない程度に)血圧が下がっているだけで、まだ循環が残っていることもあります。そんな可能性を考えれば、血管収縮薬のアドレナリンも有効です。

なので PEA では、静脈路が確保でき次第、アドレナリン1mgを投与します。

PEAが起きる代表的な原因

わかりやすい例として出血多量を例に PEA の概念をご説明しましたが、その他、PEA の原因として考えるべき症例が10ケースほどあり、ACLS や ICLS では、Hs &Ts としてよく知られています。

看護師が意外と知らない心停止PEAの原因の例

詳しくはACLS関連の勉強をすることをお勧めします。

心拍と脈拍は別もの


大事な点は、心拍と脈拍は別物だという根本理解です。

心電図モニターで心拍が出ていても、頸動脈で脈拍がなければ、心停止です。

心電図が正常であっても心停止していることがあるのです。

モニター心電図に騙されるな!


心停止というのは、字義通りの意味ではなく、臨床状態の定義と考えましょう。

それは、反応なし、脈拍なし、呼吸なし、の状態。

心電図上の心拍数に騙されないように注意! です。

人を呼んですぐに胸を押し始めましょう。

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