残業代がつかない新人ナース 自分の勉強のため? それとも業務?

先日、オペ室看護師の先輩とちょっとした言い争いになってしまいました。

新人看護師の超過勤務申請を巡っての話だったのですが、その中でジェネレーション・ギャップというか、育った時代の差を感じた一件でした。

うちのオペ室では、入職して1年目の新人さんに対しては厳しいというか理不尽なしきたりがいろいろあります。

例えば、入職して半年は時間外勤務申請をしちゃダメ とか、
はじめて受け持つ手術の場合、手術が定時を延長しても残業代は付かない とか。

皆さんの施設ではどうでしょうか? そんなのがふつうなのかな?

私自身が1年目のとき、正直、「理不尽」だと思いました。

でも、まあ、その頃は右も左もわからず教えてもらっている身分なので、とりあえず我慢してやり過ごしました。

入職3年目ー「入職して半年は時間外勤務申請をしちゃダメ」という規則の撤廃へ

でも自分がプリセプターをするようになったり、新人教育に関わるようになってからも、やっぱりおかしいものはおかしい! という思いは消えず、数年前から少しずつ改善に乗り出しています。

まず手始めにやったのが「入職して半年は時間外勤務申請をしちゃダメ」という規則の撤廃。

つまり新人は残業が付けられないという決まりです。

根拠はなに? と就業規則を調べてみたけど、そんな記載は一切なし。

実はこれは内規というか文書には残せない暗黙の申し合わせだったことが判明したのです。

労働基準法的にはいくら新人であっても定時を越えて働かせた場合は、通常時給の1.25倍は支給しなくちゃいけないことになっています。その点を指摘したら、上司はシブイ顔をしながらも「わかりました」と認めてくれました。

特にオペ室なんて、医者の都合で手術が延長するだけで、看護師のせいで時間外になるんじゃありません。それなのにこれまで誰も文句のひとつも言わなかったのが非常に不思議でした。(新人自身からは言えないのわかるにしても、2年目以降は「喉元過ぎれば」ってやつなんでしょうね)

トレーニングも仕事のうち

で、冒頭の先輩とのやりとりの話に戻りますが、問題になったのは「新人が初めて受け持つ手術の場合、手術が延長しても残業代は付けられない」という点。

私はこの点もすっかり撤廃になったつもりでいましたが、どうやらその先輩はそうは思っていなかったようで、「最近の新人は自分の希望で入った手術でも平気で時間外申請しているけど、どうなってるの?」と、教育担当の私に訴えてきたのでした。

自分の勉強のために特に希望して手術を担当しているのに、残業代をもらおうなんてけしからん! というのが、その趣旨のよう。

でも、トレーニング的な要素が含まれていようと「業務」を行なっているのであれば、その分の賃金が出るのはあたりまえ。そうじゃなければただ働きさせてることになりますしね。

「自分の勉強のためなんだから」というセリフは、新人教育を巡ってはよく耳にしますが、自分の勉強っていったいなんなんでしょう? 別に手術を担当するのは趣味でやってるんじゃなくて、仕事でやってるわけです。

業務を遂行するために必要な訓練・勉強は仕事の一部なんじゃないの? と私は思っているのですが、古い先輩にとってはどうやらそうではないようで。。。

新人はタダでさえ能力が低いのだから、一人前に超過勤務手当てをもらおうなんて贅沢言うんじゃない、みたいなことを平気でクチにする古い人もいます。だからこそ 1年目と10年目じゃ時間あたりの給料単価も違う わけで、そのことを知ってか知らずか、ぜんぜん理屈に合ってない。

看護師には職業倫理的に自己研鑽が求められていますが、そうした個人的な学習と業務上必要な学習を混同されている部分がある気がしてなりません。

私自身は勉強することは決して嫌いじゃないので、仕事以外のこともあれこれ勉強してますが、それは個人の意欲に任されている部分です。

日々の業務に必要な最低限のことは業務時間内に教える・訓練するべきだと思っています。

今後はそんな職場環境にしていきたいと思って、あれこれ改善策を考えているところです。

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コメント

  1. みん より:

    うーん、うちでは3ヶ月間は試用期間なので残業代は付かないですが3ヶ月たてば問題なく付きます。でも勤務終了後は交代できる人がいて、自分の意思で残る場合は付きません。
    この仕事は微妙なところですね。仕事の遅さもありますし、上の人なら30分で終わるところが1時間以上片付けにかかったとか。

  2. 管理人 より:

    みんさん、こんばんは。
    最近のマイブームで、労働条件について調べているんですが、そうしたら「へぇ~」という目から鱗的な事実がいっぱい出てきておもしろかったですよ。
     
    「試用期間」と称していても、職員として採用しているのであれば残業代を出さないと労働基準法違反ですし、残業代を本当に出さないのであれば、そのことはきちんと契約書として取り交わされていないと無効だそうです。
     
    仕事の効率に関しては、例えば1年目と5年目じゃ違うわけで、うちの場合、月収にして5万くらいは差が付けられています。そういうあたりで経験差はきちんと加味されているので、残業代を認めないという話とは違うと思うんですよね。
     
    「勤務終了後は交代できる人がいて、自分の意思で残る場合は付きません」というのは確かにそういう一面もあると思います。ただ私的には次回以降、その手術を一人でスムーズにこなすために必要であれば職場全体のメリットになるわけですから、残業代をつけてでもやってもらうべき事柄だと考えています。
     
    別にその術式が一人でできるようになることは、職場的に求められているだけであって、個人の財産(?)とはまた違う種類のものですから。そこまで言い切ってしまうとちょっとドライすぎる気もしますが….
     
    いま、そんな感じで職場内でいろいろ発言していると、件のようにやっぱり衝突は多々あります。全面的に私の考え方が認められるとは思っていませんが、「そういう考え方もあるんだ」というひとつの発想の転換のきっかけにでもなってくれれば、と思っています。この問題突き詰めていくと、労働者意識と看護師の倫理観また歴史というすごい難しいに突入してしまうんでしょうね。

  3. 新人ORナース より:

    はじめまして。いつもこちらのHPで色々と勉強させて頂いてます!色々とわかりやすい解説があり、とても重宝しています。
    うちの病院でも、先輩にWではじめてのOPEに一緒についていただいたりすると超勤はつけることができません。仕事は仕事としてその業務に従ってやっているのになぜ超勤をつけられないのか納得いかない部分が多くあります。私は管理人さんよりの考えで、仕事は仕事。好きで残っているわけじゃないのに、なんだかとても共感しました。先輩方のなかにはひとり立ちしたOPEでさえ新人が超勤をつけることに良い顔をしない人もいます。私が(先輩)が残っているのだからあなたも残るのが礼儀でしょうと言わんばかり。改善しない限りうちの病院の離職率は減らないでしょう(30%越えです)

  4. 管理人 より:

    私が残っているんだから、あなたも残るのが礼儀でしょ、という風潮。
    ありますよね。それが社会人としてのマナーだと言われれば、否定はしませんが、悪しき日本の美意識と思っています。
     
    それと「患者さんのために」という大義名分のためにNOと言えない雰囲気もありますよね。看護師として早く一人前になって安全な医療を提供できるようにするためには自己犠牲も厭わないという空気。なにかあると「看護者としてのあなたの資質を疑う」みたいな話になってしまったり。
     
    ホント新人さんは苦労していると思います。古い体質で厳しく言う人もいれば、私のように甘いことを言う人もいて、それなりにバランスがとれているのかもしれませんけど。
     
    ま、一意見として聞いてくださいね。

  5. ゆう より:

    はじめまして★ウロマチックについて調べてるうちに辿り着きました。。。とても参考になりました、ありがとうございます。
     
    私は病棟看護に学生時代どーーーしても馴染めず悩んでるときに手術室実習があり…自分はここで看護がしたいっ!!と感じ、手術室を希望し入職1年目の看護師です。
     
    みなさんのコメントを読んでいると色々考えてる方が居るんだなーと勉強になります。
    ちなみにうちの手術室の師長が、「時間外はしっかり付けるから、その分全力で働いてください。」という方針なので・・・私はちゃんと時間外もオペ手当も頂けています。
    先輩たちも帰るのが遅くなると「ちゃんと時間外書いて帰りなよ~笑」って言ってくれるので、恵まれているのだと感じました。

  6. 管理人 より:

    ゆうさん、はじめまして。ゆうさんのところの師長さん、前向きでいいですね! 職場の空気って、昔から受け継がれてきたものというのが大きい気がします。ぜひそのいい雰囲気をキープしていってくださいね。うちはなんとか変えたい! がんばってます。
     
    看護の仕事って病棟だけじゃないし、病院だけでもないし、医療・福祉現場以外にも活躍の場はいくらでもあります。特に「看護の視点」は人間がいるところならどこでも武器になるスキル(?)。ゆうさんはオペ室に落ち着かれたのかな? 固定概念にこだわらずに看護という武器を片手に世の中を渡り歩いていきたいなと思ってます、私は。

  7. 小林 より:

    「上司が認めたら時間外OK]という病院(会社)が多いようですが、
    これは古い就業規則です。
    最近、新しい最高裁判例が出まして、
    「客観説」を採用しています。
     
    つまりどういうことかと言いますと、
    「残業だと思ってくれたらOK」(主観説)
    ではなくて、
    「常識的に業務といえるなら残業だ」ということです。
    「上司の指揮監督下にあれば勤務」という
    言い方もできます。
     
    つまり、タイムカードを押さなくても
    みんなでビールを飲んでいたら
    時間外手当は不要です。
    「客観的に」業務ではないので。
     
    逆に、たとえタイムカードを押していても、
    客観的に見て勤務の状況にあるなら、これは時間外手当を払わないといけないのです。
     

  8. ゆう より:

    お忙しいのにコメントありがとうございます。
    お仕事は2~3ヶ月でチームローテなので・・・まだまだ勉強の日々です。
     
    手術室は希望しただけあって、とても楽しいです。
    ただ人間関係が。。。なので、見て見ない振りをしながら、毎日お仕事に励んでいます。
     
    手術室看護師として一人前になれるよーにがんばります。

  9. とも より:

    こんにちは。うちの病院では新人は1年間、時間外取れない決まりです。その理由としては看護記録による時間外が長い、仕事効率が悪いという点からのものらしいという話です。ちなみにボクはOP室で待機が付きますので、新人で唯一、時間外をとることができます。同期には悪い気がしています。
    時間外のオペに入っていない場合では、勤務時間終了から30分くらいはサービスタイムと言われ、無償勤務があります。忙しいときは1時間くらいのときも・・・
    時間外が多いと、経費削減でスタッフが移動となり、人手不足で時間外が更に増える悪循環になるという噂を先輩から聞きました。そのために科長が時間外にうるさいだとか・・・
    ながながと書いちゃいましてすみません。
     

  10. 管理人 より:

    小林さん、客観説のご説明、ありがとうございました。
    最近出た判例なんですね。今後の「武器」とするために調べてみたいと思います。ここのところ、業務改善・労働改善を含め、上司と何かを訴える場面が多いのですが、知識が武器になっていることを強く感じています。こうなると俄然勉強したくなるんですよね。
     
    ゆうさん、手術室の人間関係。確かに大奥というか穴ぐらみたいな閉鎖的なところですからね。病棟と違って毎日顔を合わせるスタッフがかわらないというのも関係しているのかも。仕事自体は好きで楽しくできているのに、人間関係で、、、というのは非常に残念なことですが、どうぞつまらないことには巻き込まれずにうまく立ち回ってくださいね。
     
    ともさん、ともさんの手術室では、待機ではなく、手術延長については時間外は認められているんですか? 病棟の記録時間が長い、とかもホントは時間外を認めない理由にはならないのですが、オペ室だったら間違いなくナースの仕事の善し悪しで大幅な時間延長になっているわけではないので残業代がでないとおかしいです。理屈で考えてダメという理由はあり得ません。サービス残業が恒例になっている現状からすると、改善は難しいかもしれませんが、いつかともさんが偉くなったときにでもぜひ働きかけをしてほしいなと勝手ながら思っています。
     
    時間外が多いと経費削減でスタッフ異動っていうのはおかしな話ですよね。時間外が多い=スタッフ数が足りていないという判断がふつうじゃないでしょうか? 管理職というのは職場の時間外が多いと管理能力を低く評価されるなんて話も聞きます。それを恐れてサービス残業などスタッフに無理な勤務を強いるのか、それとも業務の無駄を省いたり、業務内容と時間外の妥当性を上に訴えかけたりしてスタッフを守るのか、これは管理者の資質ですよね。
     
    私もできる管理者の下で働きたいです。

  11. 残念なNurse より:

    拝見いたしました。
    以前勤めていた病院は、定時が来たらタイムカードを押させる。今の職場では、定時に帰るようにとは言ってますが、実際問題定時には帰られるじょうきょうではないです。
    急患などで休憩時間が充分に取られなかったら糾弾まがいのこと言われるし、定時に帰れば陰口叩かれる始末。
    御用組合は見て見ぬ振り。
    このHPを参照して仲間を増やして労働者としての「看護師」を周知させていきたいです。
    しかし何故職場風土でサビ残して自分を犠牲にさせるのだろうか未だ持って不可思議です。
    患者さんに喜ばれてとかってのは、あくまでも付加価値だと自分は考えてます。
    労働環境を改善しないと、ますます医療から看護師が去っていくし、現実に去っていってますから・・・。