今日放送してた「Dr.コトー診療所」を見ていた人います?
(日付的には昨日ですけど)
しめしめ、また手術場面だ、なんて思いながら見ていたら、患者が急変。
なにかと思いきや、悪性高熱だって!
ひぇ~、と思ってしまいました。
よりによって悪性高熱とは。。。
そんなマニアックな症例を持ってくるとはなかなかです。
麻酔科医最大の悪夢とまで言われる悪性高熱
麻酔の勉強をしていると麻酔の副作用として必ず出てくる疾患ですが、発生頻度は相当低いです。
うちの麻酔科医で最長勤務のドクターがいうには、「オレがいた20年間、この病院じゃ起きたことはないよ」だそうで。
まあ、ドラマの筋書きとして教科書的なベタなネタを持ってきたなぁという感じでした。
ところで悪性高熱ってどんな症状だか知ってます?
15分間に0.5℃以上の体温上昇があって、原因不明の頻脈、不整脈、血圧変動があったり、異常呼吸、筋強直、赤褐色尿、高カリウム血症などが見られるものです。まあ、詳しくは教科書を見てみてください。
めったに起きるものではないけど、生命に関わる問題として、麻酔に関わる者としてはいちおう押えておきたいポイントです。麻酔科の術前診察やムンテラのときも必ず悪性高熱については話していますしね。
今はダントロレン(ダントリウム)という薬の登場で死亡率は減りましたが、起きたら怖い疾患というのは変わらないみたいです。
治療法としては、まずは麻酔の中止。オペは止血をして中止。純酸素換気で吸入麻酔の排除を促し、ダントリウムの投与。それに全身冷却。その後にアシドーシスの補正などを行なっていきます。
Dr.コトー診療所でも、まあだいたいマニュアル通りの治療をしてましたが、特効薬であるはずのダントリウムの投与場面はありませんでしたね。その後、何事もなかったかのようにオペ続行、その後もふつうに療養してましたが、ふつうはICUで集中管理になるそうです。
この話を手術室看護の実際につなげるとしたら、体温管理の重要性というところでしょうか?
全身麻酔のときは、ちょっとした短いオペでも基本的に持続的な体温測定を行なうと思いますが、それはなぜかというと、この悪性高熱を意識したモニターという意味合いもあるんです。
なにも「体温低下⇒加温開始」のためだけじゃないんですよ。
日頃、体温低下ばかりに目が行きがちかもしれませんが、生命にも関わる異常な体温上昇、どうぞ意識していってください。
コメント
悪性高熱は今まで2回くらい「だろう」と言う症例に立ち会った経験があります。
うちの病院には、悪性高熱セットなるものがありますが、過去に一度くらいしか出動したの見たことないですね。
定義にあるどうかはわかりませんが、挿管時の開口障害も悪性高熱を疑ってかかった方がいいみたいですね。
それに、体温管理…。
新卒や経験の少ない人だと、低体温ばかり気にしがちで、いつまで経っても加温器類をHigh(38~42度)設定にしていたりします。
たしかに、低体温は患者さんがかわいそうですけど、悪性高熱と言う症状もあると言うことを勉強して欲しいですねぇ。
悪性高熱(らしきもの)に当ったことがあるんですね。
それも2回も! 私の身の回りでは、まったくといっていいほど
聞いたことがなかったのですが、あるんですね。
体温管理の目的のうえで最も重要なはずの悪性高熱。
うちの病院では意外ときちんと教えられていない部分かな
と思ったのでついでに取り上げさせてもらいました。
全然違うことで申し訳ないのですが。。。
指に針金を入れています。しかも、串刺し先っぽ見えてます。抜く時って、どうやって抜くんですか???
看護婦さんに麻酔は多分せんと思うって言われました。ドンぐらいの痛みかも教えて下さい。。。
指に針金というと、いわゆる経皮ピンニングってやつですね。先が皮膚の上に露出しているのであれば、皮膚切開も必要ないので、局所麻酔はしない可能性が高いですね。で、どう抜くかというと、簡単、ペンチで引っこ抜くだけです。
入れてからそんなに長い時間は経ってないですよね?
引っ張られるような力は感じると思いますが、たぶん痛みは大丈夫ですよ。
ちょっと質問なんですが・・・
手術の際に鼻腔からカテーテルを挿入して胆汁を吸引していました。これは誤嚥性肺炎を予防するためのようですが、胃の中に胆汁があるのでしょうか?
学生さーん、はじめまして。手術見学に入られたんですね。消化器系の手術だったのかな。
さて、胆汁を引いていたということですが、それは本当に胆汁だったのでしょうか? 胃液じゃないのかなという気がします。
一般的に手術の際に胃管を入れることはよくあります。術後に気管挿管チューブを抜くときに胃の内容物を吐いてしまうことがあって、それが気管の方に入ってしまうといわゆる誤嚥性肺炎になる可能性があります。
術式によっては幽門を越えて胆汁を引くってこともあるのかなぁ。そのあたり勉強不足でイマイチ自信を持ってお返事できないのが残念なのですが。。。
返答ありがとうございました。
手術は胸部の手術でした。引いてた液が黄色のような色で、胆汁だったとのことです。
なぜ胆汁が胃の中にあるのか・・?と質問すると解剖生理をも一度勉強して・・と言われて、いろいろ調べましたが見つけられませんでした。その後友達とも話しましたが、管理人さんのいうように「胃管をいれることはあるけど・・・何なんやろね?」「ほんとに胃の中にチューブが入ってたのかなー?」といろいろ議論しました。
話は変わりますが・・急性期実習に向けて勉強していることころ、このブログに出会いました。OP室ナースはエキスパートだなぁと尊敬します。これからもこのブログを読まさせてもらって頑張りたいと思っています。
入っていたチューブが、間違いなくマーゲンゾンデで、引けたのが胆汁混じりの胃液と言われれば納得できます。
胆汁と言い切ったのは誰ですか?
オペ室のナース? 看護教員? ドクター?
胆汁が腸管に分泌されるファーター乳頭の位置が胃に近い(と言っても10cmくらいあるみたいですが)という点と、全身麻酔(筋弛緩)によって超蠕動が弱くなっているため、逆流して胃に入ったという答えでたぶんOKだと思います。
最初はチューブを十二指腸までいれたのかなとか、なにか特殊なチューブだったのかとも思いましたが、肺の手術ということで、たぶんふつうの胃管だったと判断しました。
以上、参考になりましたら。
この前、悪性高熱症の人が親族にいるひとの手術がありました。
前もって情報があったので、ダントロレンや大量のソーダライムを用意、冷生食、氷を大量に作ったり、色々準備しました。もちろん麻酔は静脈麻酔薬のみで。
事前にこのように素因があるって分かっていたから十分な用意が出来てたけど、手術中急に発症したらどれだけ怖いか…うちはダントロレン高いから置いてないし…
ぶっこさん、何事もなく手術は終わったんですね。悪性高熱の可能性がありつつも手術に同意されたご本人さんも、気がきじゃなかったでしょうね。よかった、よかった。無事に終わった今となって考えてみると、一種の防災訓練みたいな感じで、オペ室全体のいいケーススタディーになったんじゃないでしょうか。うちではそう言った症例はないので、いざというときどう動いていいかリーダーを取れる人はナースにはいないと思います。麻酔医の中でもそんな経験がある人がいるのか、いないのか。。。。