歯科業界で発覚した未洗浄・未滅菌器具使い回し/2014年5月

先日、こんなニュースが流れたのをご存知だったでしょうか?

歯科クリニック、診療器具未洗浄・未滅菌使い回し実態の報道

歯科医と眼科医は衛生管理がズサンというのは、今に知られるようになった話ではありませんが、こんな形で堂々と事態が公表されたのは意外でした。

医療者は、自分が受診してみればそこが衛生的に安全かどうかはわかりますし、判断しながら医療機関を選んでいると思いますが、一般の方にとっては衝撃的なニュースだったことでしょう。

歯科医も含めて医療の専門家といえば、衛生管理はしっかりしていると信じてますが、ところがどっこいこのザマです。

自分の身は自分で守る。そんな発想が医療受診にも必要です。(そういえば医者に殺されないための本、みたいのが流行ったことありましたね。私は読んでませんけど。)

こういう調査にちゃんと回答している歯科医というのは、どういうつもりなんでしょうね。悪気があったらきっと「滅菌してません」なんて答えないでしょうし、そもそもこんな調査がアンケートとして成り立つこと自体、驚きだと思いません?

私が改善に取り組んだ眼科手術の使い回し事件の場合もそうでしたが、そもそも医師(歯科医師)の感染に対する知識が間違っていたり、衛生観念が希薄なんだと思います。

他がみんなそうしているから、ということで疑いもしない。うちは他の病院よりマシだと言ってみたり、感染が現に起きていないから、未洗浄使い回しでも大丈夫なんだと主張したり。

確かに手術手技書にも平気で使い回しのやり方が書いてあったりして、業界全体が腐っているという印象でしたね、眼科に関しては。

今回の歯科での使い回し報道で特に着目したのは、「研究班は患者ごとに清潔な機器と交換するよう呼びかけている」というくだり。

国立感染症研究所の研究ということで仕方ないのかもしれませんが、呼びかけて終わり? と思っちゃいます。

そんなもんなんでしょうかね? 研究に同意・協力してくれた医療機関に対する道義的・倫理的配慮があるのかもしれませんが、でも犯罪行為でしょ? 儲けを上げるために故意に患者を体液・血液被曝させたわけですから、歴史的に事件となっている注射器使い回しとおんなじです。

消費者はもっと騒いでいいと思うんですけどね。

医療機関の信頼失墜ということで、かなり大きな報道だと私は思っていますが、皆さん、無関心なのが不思議。ASKAが覚せい剤で捕まっても私達の生活にはなんにも影響しないのにね、なんて思っちゃいます。

とりあえず、眼科の使い回し事件を追っている私としては見逃せない報道でしたので、ここにクリップしておきます。

歯削る機器、滅菌せず再使用7割…院内感染懸念

読売新聞 5月18日(日)7時29分配信

歯を削る医療機器を滅菌せず使い回している歯科医療機関が約7割に上る可能性のあることが、国立感染症研究所などの研究班の調査でわかった。
患者がウイルスや細菌に感染する恐れがあり、研究班は患者ごとに清潔な機器と交換するよう呼びかけている。
調査対象は、歯を削るドリルを取り付けた柄の部分。歯には直接触れないが、治療の際には口に入れるため、唾液や血液が付着しやすい。標準的な院内感染対策を示した日本歯科医学会の指針は、使用後は高温で滅菌した機器と交換するよう定めている。
調査は、特定の県の歯科医療機関3152施設に対して実施した。2014年1月までに891施設(28%)から回答を得た。
滅菌した機器に交換しているか聞いたところ、「患者ごとに必ず交換」との回答は34%だった。一方、「交換していない」は17%、「時々交換」は14%、「感染症にかかっている患者の場合は交換」は35%で、計66%で適切に交換しておらず、指針を逸脱していた。
別の県でも同じ調査を07~13年に4回行い、使い回しの割合は平均71%だった。

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コメント

  1. btjss733 より:

    はじめまして歯科医師です。看護師の労働条件.感染対策の動画などいつも楽しくブログを読ませていただいています^^
    自分も今回の報道の前から歯科の感染対策が劣っている事を認識していてとても恥ずかしいです。以前から歯科の麻酔担当看護師と共に、CDCガイドラインなどを一緒に読み返させていただいたりしていて、やはり日本の歯科診療室での感染対策はとても遅れていると感じ、当院では全て高圧蒸気滅菌を全器具を患者毎に行っています。しかし、とてもコストがかかり事務などと衝突したり歯科医師などと話したりしても問題意識として持っている人は少なく、苦労したのを覚えています。スタンダートプリコーションの概念は歯科業界にはない様なもので悲しくもなります。未だに歯科の局所麻酔がリキャップ前提のもので、リキャップをしないで廃棄するシステムも実用には耐えられない程の物しかなかったり悲しい想いをする事が多いのも事実ですが、今後も患者への感染対策に取り組んでいかないとならないと常に思っています。
    御指摘の通り「研究班は患者ごとに清潔な機器と交換するよう呼びかけている」というくだりは歯科業界がおかれている感染対策の低さを反映したものだと考えています。誠にお恥ずかしいです。いつもは、病院で唯一全身麻酔を行う診療科として、当院の麻酔に関わる看護師への話題提供のネタ探しと自分の学習のためにブログを読ませていただいていましたが、歯科の話題でしたのでコメントさせていただきました。今後もブログをとても楽しみにしています。

  2. 滅菌技師より より:

    病院内の中材業務→洗浄・滅菌等ですが、
    規模の大きな医療機関ほど、「業務委託」が
    顕著だと思います。
    さて、洗浄・滅菌は専門性が要求される業務だと思います。
    しかし実態はどうなのでしょうか?
    業務に従事する多くは非正規雇用のパート労働者ではないでしょうか?
    低賃金や雇用の不安定さが解消されない限り、
    「中材業務」の質は高まらないと思います。
    また、職業感染予防の観点からも、パート労働者の労働環境には、
    問題点が多いように思います。(ワクチン未接種・EOGの暴露など)
     
    自転車操業的な器材運用のために、
    フラッシュ滅菌(スピード滅菌)を多用している現状や、
    SUD再使用の禁止(見直し)など、
    本来は、中材部門が積極的に発言・提言するべきなのですが、
    病院(委託側)と企業(受託側)という関係性では
    「イコール・パートーナー」にはなりえません。
     
    ガス・水道・電気といったインフラと同様に、
    中材業務は病院機能における重要な「インフラ部門」です。
    しかしながら、中材業務それ自体は、保険点数の対象にはなりません。
    院内における予算配分は、病棟・外来・手術部など診療報酬という
    「利益」の発生する部署が優先され、中材への予算配分は常に後回しに
    される傾向があると思います。
     
    また、人事異動において「中材」へ配属された場合、
    「降格人事」と看做す風潮が根強く残っているのではないでしょうか?
     
    コストの面から二点、述べます。
    必要十分な器材を購入せずに、自転車操業的な器材運用で
    フラッシュ滅菌を多用する。
    これは、結果としてコスト高になると思います。
     
     
     
     
     
     
     
     

  3. 滅菌技師より より:

    すいません。
    途中で送信してしまいました。
     
    フラッシュ滅菌の多用は、
    器材へのダメージと誘発させる要因であり、
    フラッシュ滅菌の運用自体が、
    看護師の業務の負担増になっている、と思うのです。
    また、フラッシュ滅菌での器材運用が、
    結果として手術の遅滞を招く事例もあります。
     
    長くなって申し訳ありません。
    中材業務は、保険点数の対象にはなりません。
    しかし、中材が取り扱う器材(病院の資産)は、
    莫大な金額です。
    これらを「専門的に」運用することが、
    正しいコスト管理であり、患者さんに対する誠実さだと
    思います。