注射器使い回し、手術器具未洗浄使い回しが続いたのはなぜ?

今日、予防接種で間違って人に打った注射器で別の人を刺してしまったというニュースがありました。

使用済み注射器使い小5男児に接種 美浜町

(2013年10月3日) 【中日新聞朝刊

 愛知県美浜町は2日、町保健センターで9月27日に実施した日本脳炎の集団予防接種で、町内の小学5年の男子児童(11)に誤って使用済みの注射器で接種をしたと発表した。
町は保護者に謝罪し、翌28日に男子児童に血液検査と感染症の予防接種をした。体調の異常は報告されていないという。

人の血液や体液に触れた器具を、他の人の人体に挿入するという行為。

あってはいけない行為。そうですよね。ふつうは。

だから謝罪して、感染症に罹患していないか検査をして、予防策を講じる。

それが自然で当たり前な医療者としての対応です。

でも、このブログでもずっと書いているように、私が勤務していた病院では、眼科白内障手術で、手術器具を洗いもせず消毒もせず、滅菌もせず、1日十数人の患者に使いまわすことが普通に行われていました。

さらには、高い薬だからといって、針だけ変えて同じ注射筒で何人もの患者に薬を使いまわしていました。もちろん患者はそんなことは知りません。それでいて、診療費の請求では1人1本使ったことにして請求をしていたのです。

ありえないこと。

誰もがそういうでしょう。

でもそれを大手総合病院が去年2012年11月まで普通にやっていたのです。

行っていたのは眼科部長の医師で、加担していたのは手術室の看護師たち。私もその一人でした。

最終的には私が大騒ぎをして、病院に詰め寄った結果、私の知る限り9年続いていた悪習に終止符が打たれたのですが、私は職場を追われることとなりました。

使いまわし自体は終わった過去の話ですが、問題にしたいのは、なぜ、それまで10年にも渡って、明らかに間違った事態が正されなかったのか? という点です。

眼科部長の医師は、あえて看護師に指示をして、廃棄すべき注射筒を取っておいて、使いまわしていたのはなぜか?

その指示を受けた看護師たちは、なぜ疑問の声を上げず、間違った行為に加担し続けたのか?

私が、問題提起したのは2006年頃から。それでも現場のナースや主任、師長はなぜ動けなかったのか?

私が書いた事故報告書や問題提起の文書を見た安全対策責任者や感染対策委員会、院長は、なぜ動かなかったのか?

そしてなぜ私は職場から排除されたのか?

信じられないかもしれませんが、ほんのつい最近まで、大手総合病院で行われていた事実です。

これを読んだナースは、口々に好き勝手なことを言うでしょう。

そこで聞きたい。あなたが、この現場の中にいたら、声を上げられますか? 立ち上がれますか?

おかしい! とネットの上で言うのは簡単です。そう思うなら、現場にあなたがいたら何をするんですか?

そこを聞きたい。

そんな職場はとっとと辞める。

それはそれでいいでしょう。みんながやばいと思って辞めれば、悪習は成り立たず、つぶされたはずです。

でも、それは少なくとも10年以上、続いた。

このケースから私たちは何が学べるでしょうか?

ぜひ、医療者として考えてほしく、ここに書かせていただきました。

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コメント

  1. kimiko より:

    ロンドンのNHSの病院で手術室看護師をしています。この記事を読んで、しかも日付けが結構新しいのでびっくりしています。
    「わたしならどうするか?」法律も文化も違うことを承知の上で、今自分が勤務している病院で起こったこととして考えてみます。日本で同じことはできないにしても、少しは参考になれば・・・。
    イギリスでこのような医療事故に加担したことが公になった場合、その看護師はほぼ間違いなく免許停止になります。たとえそれが上から命令されて仕方なくやったにしてもです。なぜなら、こちらでは看護師は看護行為を行う際、そのすべての行為(指示されたことも含む)は自己責任において行わなければならないと法律で決められているからです。もちろんイギリスでもこのような醜い医療事故はないとはいえませんが、それを嫌々ながらもやってしまったのか、それとも拒否してやらなかったのか、裁判になった時にはその看護師個人がどう判断して行動したかに焦点が絞られます。法律がきっぱりと「すべての看護行為は自己責任において」と謳っており、看護師はそのことを十分に認識していること自体がすでに義務なのでいいわけは一切できません。どんな事情があろうともやってしまったらこれはもう完全に自己責任なのです。病院や上の人がかばってくれることなんてまずあり得ません。自分の免許は自分で守るのが鉄則。個人主義のお国柄ですからね。ということなので、もし同じ医療事故がうちの病院で起こったとしたら、その眼科部長の指示を拒否する看護師が続出するでしょうね。看護師たちは知っているのです。その眼科部長が裁判で何と言うのか。「確かに指示は出したが、最終的には看護師が自己判断でやったのだ!」だからイギリスの看護師は自分の看護行為にとても慎重にならざるを得ないのです。看護記録も重要です。やっかいなことに巻き込まれそうになったら、とにかく記録を残して自己防衛に努めます。そして何よりも、自分が間違っている、と思ったことは拒否する。クビになっても免許を守ることが先決ですから。
    何だか自己防衛の話になってしまいましたが、この制度が看護師にプロフェッショナリズムと主張する勇気を与えているのは事実です。