速乾性アルコール製剤の擦り込み~手指衛生の落とし穴

「一処置一手洗い」

病院勤務の医療者にとっては常識。

「感染対策は手洗いから」

これも常識。

こまめな手洗いがもっとも効果の高い感染対策と言われています。

なんですが、、、皆さん、実際にできてます?

「一処置一手洗い」はベッドサイドに水道がある訳じゃないから難しいよねぇ、ということで、最近は擦式アルコール製剤を使った手指衛生が一般的になってきました。

手に目に見える汚れがない限りにおいて、擦式アルコール製剤の手指衛生は流水と石けんでの手洗いより同等以上の効果があるとされ、CDCガイドラインでも推奨されている方法です。

これによって、臨床での一処置一手洗い(一処置一手指衛生?)は、「絵に描いた餅」ではなく、実行可能なものになったはずですが、実はいくつかの問題があって、あまり有効には行えていない可能性が大です。

ひとつは、擦式アルコール製剤の正しい擦り込み方があまり認知されていないという点。

これは最近、うちの病院でやった被験者1000人弱での調査なのですが、ブラックライトで光る蛍光物質をアルコール製剤に見立ててもらって塗り残しの調査をしたところ、半数以上の人で塗り残しを検出。

いわゆる洗い残しの好発部位を中心に、それは見事に塗れていませんでした。

手洗いの代わりにアルコール擦り込みでいいよ、とは言っているものの、正しく塗れていないんじゃ意味がない。ゆゆしき事態です。

普通の流水での手洗いに関しては、指先や指の間、親指、手の甲を意識した手洗いの動きができているのですが、アルコール擦り込みとなると、それがすっぽ抜けるようで、サラッと手の平に馴染ませるだけの人がほとんど。

流水による手洗いに代わる物としてのアルコール製剤擦り込み、という意識付けが足りないようです。

そこで、正しいアルコール製剤の擦り込み方をPRする作戦を計画中。

そんなときに Twitter で情報が流れていたこちらの動画。

ジュネーブ大学の手指衛生啓蒙ビデオのようです。

センスが良いですよねぇ~。

日本人が作ったら、説教調の堅苦しいものになっちゃいそうですが、こいつはさすが!

アルコール製剤を擦り込むのにも、流水手洗いと同じような手の動きが必要だという点がイヤでもインプットされるはず。

それともう一点のポイントは、採血する場面など、何度もアルコールを擦り込んでいる場面。

こまめな手指衛生とはいうけど、この程度のこまめさ、というのも印象的に映るはずです。

ここまでやろうと思ったら、病棟の入り口や包交車に擦式アルコール製剤のボトルを置いておくだけでは難しいという点にも気づいて貰えたら、、、

動画のように小さなボトルを個人持ち、というのが理想ですね。

これを感染対策委員会で提案したことがあるのですが、コスト的な問題で却下されました。

いまや100円ショップでも小さなプラボトルのアルコール・ローションが売られている位だから、大量購入でそれほど高くはないと思うのですが。中身は面倒でも個人で詰め替えという形にすれば、どうかなぁ。

携帯用の手指アルコール製剤各種
↑左は100円ショップ製品。右はAHAで買ったスプレー式。胸ポケットにさせて便利。

この動画でPR後、改めて提案してみようと思います。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. れもん より:

    私も前の職場で、感染対策についての研修会参加直後、携帯用擦り込み式消毒薬の導入を取り入れている病院があると紹介し、必要性を述べたのですが、委員会ではコストの面で却下されました。
    しかし、最近思います。
    必要性を理解していないから、検討されないのだと・・・。
    某製薬会社さんに協力していただき、ブラックライトでの勉強会は開けたのですが、やはり、重要性を理解してくれた人は少なかった印象を受けました。
     
    私が現在、取り組ませていただいている勉強会でも、少し導入していかれたらと思っています。
     
    twitter共に、良き情報を有難うございました。

  2. Nsマン より:

     管理人さんの病院は大丈夫ですか?
     ウォータレス法を取り入れている病院に対して、行った調査の結果はあまりよくない結果だったと思います。
     手術前に一度手洗いしたあとの手指培養を最低年に一回は行ったほうがいいと思います。
     Drの中には手洗いを行った手指は清潔と思い込んで、平気で被布などに触れるDrもいます。
     それと、アルコール製剤を推奨していますが、アルコール製剤は皮膚や粘膜に対する刺激作用が強いため、苦手とする人もいます。特に主婦なら手荒れなどで嫌な思いをする人も少なくないはずです。
     そういう人たちには今後どうしていこうと思っていますか?
     
     
     
     
     
     
     

  3. ままなーす より:

    Nsマンさんのコメントに一言。
     
     
    そうですよね、ウォーターレス法も、正しく行わないとだめなんですよね。アルコールの量と、擦り込み方です。
     
    そして、手洗いをした手が「清潔」と思っている医師の多いこと。当方でも、手洗いしただけの手袋をしていない手で、ガウンのひもを結び、器械台のうえにべたべたと触った手袋のパッケージを広げる先生、結構います(涙)手は滅菌じゃないんだけど…
     
    さて、手荒れの件ですが、たしかにちょっと前のアルコールはかさついてしまうものが多かったですよね。最近のものはずいぶん良くなってローションが入っているものが多く、アルコール分は飛びますが、保湿成分は手を守ってくれるようです。いろいろ試供してみるといいかもしれません。また、こまめなスキンケアも重要ですよね。冬に向かいますので、ハンドクリームやローションをうまく使うとよいと思います。またまたこれも試供してみるといいのが見つかるかも?
    がんばってください~。
     
     
    管理人さん、この映像、おもしろかったです。
    わたしも、ボトルにひもをつけてアルコールを持ち歩いています。
    ガーゼカウントのたびに、手袋着脱時に擦り込んでます。めんどうですよね~。ついついささっとやっていました(汗)
    擦り込み方、参考にしていきます!
     
     
     
     

  4. 管理人 より:

    ちょっと誤解されやすい書き方だったかなとちょっと反省。
     
    アルコール製剤の正しい使用法の調査は、オペ室で行ったものではなく、病院全体で医療職者以外も含めた全職種への調査です。
     
    ちなみにウォーターレス法を日頃行っているオペ室ナースの成績は良かったですよ(^^)
     

  5. 空海 より:

    ありがとうございます。
     
    いい研修資料ができた。
     
    自分は特養の感染症対策委員なので、これを紹介してインパクトで「ワン・ケア・ワン・手洗い」を実行できるようにしていきます。