休日出勤 ― 代休と振替休の違い、知ってますか?

看護界の労働条件について、あれこれ問題提起している「オペナース養成講座」ですが、今日は、家にいても緊急呼び出しがあり得る手術室看護師なら絶対に知っておかなければいけない「代休」と「振替休」の違いを取り上げたいと思います。

突発的な休日出勤は「代休」


手術室では、夜間や休日などの緊急手術に対応するため、自宅待機のon call番が持ち回りであると思います。

この場合も、仕事があるなしに関わらず本当は自由が制限されている、拘束されているという意味で、出勤扱いにしなければいけないのが、労働法規上の考え方ですが、まあ、この問題は以前にも取り上げたので、ここでは触れません。

今回の話は、オンコール番とは別に、必要があって病院に呼び出された場合の話です。

私の病院でもたまにあるのですが、その日のオンコール番がたまたま体調不良でオペに応じられなかった場合や、経験年数が若くて難しい術式に対応できなかった場合など、師長からの要請で、病院近隣に住むオペ室ナースに応援要請が入る場合があります。

皆さんもそんな経験ありませんか?

要は休日出勤というわけですが、皆さんの経験上、その穴埋めはどのようにされてきましたか?

「今日、3時間働いてもらったから、平日の明日は3時間遅く出勤してきていいわよ」

なーんて、言われた人はいませんか?

で、それにあなたは納得しましたか?

これは実は間違いです。

休日出勤の場合の正しい勤務時間・賃金の計算方法は次のようになります。

例えば、休日に呼び出されて3時間働いたとしたら、3時間の時間外勤務(通常時間単価の1.25倍)手当ての他、休日手当てが加算されて、トータル1.35倍の賃金が発生します。つまり時間単価が1,000円の人の場合は、3,000円の1.5倍で、4,050円の労働対価が発生します。

さらに労働者として貴重な休日を潰したことになるので、その分の穴埋めとして雇用者は別の休みを与えなければいけないわけですが、その場合は丸々1日の休みを与えなければいけません。

たとえ30分しか働かなかった場合であっても、です。

このあたりがあまり知られていない部分じゃないでしょうか。

法律の上で、休日というのは24時間連続した形で与えなければならないということになっています。

たとえ30分でも、仕事を命じてしまった以上、それでその人の休日は休日でなくなってしまうので、別に丸々1日休みを与えなければ埋め合わせにはならないという理屈です。

先ほど例に挙げた「今日、3時間働いてもらったから、平日の明日は3時間遅く出勤してきていいわよ」という事後処理では、労働者は二重の意味で損していることになります。

まずは本来もらえるべき1.35倍の賃金分がもらえない、さらに本来はもらえるべき休日1日分がないという点。

労働法規に関する知識が欠如している管理者(師長、婦長)が多いので、この点皆さん注意してくださいね。

こうした休日出勤の時の勤務扱いを法律の用語で「代休」といいます。この言葉は大事なのでよく覚えておいてください。

予定された休日出勤は「振替休」

似た言葉で「振替休」というのがあって、これと混同している人が非常に多いので注意が必要です。

振替休という制度も休日出勤の代償制度なのですが、これは予定された休日出勤にしか適用されません。

つまり病院の就業規則として、土日が休みというという決まりがあるけど、土曜日に病院の設備点検があってどうしても出勤しなければいけないというような場合です。あらかじめ休日出勤が予定されていれば、代わりに平日のこの日を休みにしますという取り決めを事前にしておくことで、この場合は休みの日がずれ込んだだけという単純な扱いをしていいことになります。

この場合は、休日に働いているけど、賃金は平日と同じ扱いです。(1.5倍にはなりません)

これを法律用語で「振替休」といいます。

振替休が認められるのは予定された休日出勤であって、勤務表が作成される段階で代わりにいつを休みとするかという点があらかじめ指定されている場合だけです。

つまり突発に発生した休日出勤に「振替休」は認められません。

この「代休」と「振替休」の違いを知らない、もしくは勘違いしている人が多いので要注意です。

休日出勤を巡って、師長がアヤしげな発言をした場合、代休、振替休という言葉を出してみてください。それで違いがわかっていなそうだなと思ったら、職員課等に問い合わせることをお勧めします。

さすがに給与計算をする事務部門がこの違いを知らないということはあり得ませんので。

こうした緊急呼び出しがあり得る職種というのが看護業界ではきわめて限られるので、看護業界でもこうした話はあまり表だって語られることがない部分かもしれません。ですので労働者である手術室看護師各自がきちんとした知識を持っている必要があります。

皆さん、看護師の社会的地位を上げるためにも、当然のことは当然と主張できるようになっていきましょ。

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コメント

  1. うさくみ より:

    あけましておめでとうございます…って遅いですね。
    休日出勤で急に日程の決まった会議に出席、なんてこともたまにありますが
    お偉いさん「目立たないところで(休日出勤じゃなくて、日勤の時間外でという意味)時間外つけていいからね」
    私「…ありがとうございます」
    と、ついそれで済ませちゃってそれ以上の要求はできないなぁ…。
    あと、いつも思うのですが、年休の希望が出せないのっておかしいよね。
    うちは休み希望はかなり通してくれるけど、それはあくまでも決められた数の月の休みの中での調整なので、
    連休とると他の時期がきつい勤務になる…。
    去年なんて五日しかとれてないのよ、年休。それも時間休込みで。
    民間の病院は、年休買い取ってくれたりするのでしょうか?
     

  2. 管理人 より:

    うさくみさん、どうも、
    あけおめです。
     
    まあ、馴れ合いの世界でいろいろありますよねぇ。
     
    私個人としては後に続く人のためにも、言うべきところは言うというスタンスでやってます。まあ、程度問題で100%って訳でもないですけどね(^^ゞ
     
    それで職場の意識はだいぶ変わって、無駄な労働はだいぶ減ってきていますよ。
     
    さて年休のお話しです。以前に、
     
    http://or-nurse.seesaa.net/article/55652594.html
     
    で詳しく書きましたが、年次有給休暇申請、出したらどうですか?
    誰かが出して、それが通例にならないと誰も出せないという雰囲気がいつまでも続いちゃいますよ~
     
    年休は2年しか持ち越せません。
    うちも希望で年休を取れる雰囲気ではないのだけど、去年はがんばって消失してしまう分はすべて使い切りました。ホントは理由なんて追及させたくないのだけど、職場としても慣れていないのでいちおうもっともらしい理由はつけましたけど。
     
    今年はもうちょっと大っぴらに有休申請して、周りの人たちの雰囲気を崩していくのを目標にしています。

  3. ちぃ より:

    30分の勤務でも、1日代休が取れるんですね、驚きました!!
    自施設では、平日夜間・土日祝日はon call体制ですが、待機料はありません。
    呼び出された毎に実務+¥1700程度の手当てがつくようになっています。呼び出しがなければ、1円にもならないタダ待機です。
    代休とか振替休日とかいう制度もありません。
    待機料を貰っていても、代休の制度は適応されているのですか?
    また、平日夜間の場合、帰宅する事なく連続で勤務した場合翌日勤務はどのように取り扱っていますか?
    現在自施設では、夜12時を過ぎた場合翌日は午後出勤、3時を過ぎた場合は1日お休みしてよいことになっていますが、大昔からの「暗黙の了解」で、書類上は勤務している事になっています。
    このままでよいのだろうかと言いながら、ずるずるきているところです。
     
     
     
     

  4. 管理人 より:

    ちぃさん、こんばんは。
     
    > 待機料を貰っていても、代休の制度は適応されているのですか?
     
    なかなか鋭いご質問ですね(^^;
    ちょっとややこしいところなのであえて避けていた部分なんですが、
    お答えします。
     
    まずは待機料が出るとは言え、オンコールという勤務体系は労働法規にはありません。宿直・日直を除けば勤務か勤務でないかのon/offしかありません。ですので、自宅待機とは言え拘束されるのであれば、それは勤務扱いになるのが本来です。
     
    ただこの部分は病院という労働環境の中では、なぜか無視されている部分です。
     
    まあ、このことは抜きにして考えてみますが、結論からいうと待機料をもらう場合で、最大で週1回のオンコールであれば、代休・振替え休制度は適用されない可能性が大です。
     
    というのは、法律で決まっている最低限の法定休日というのは、週に1回だけなんですね。今の世の中、週休二日制の企業が増えていますが、企業の義務としてあたえなければいけない休日は週1日だけなんです。ですので、休日のオンコール回数が月に4回を越えないかぎりは正当な業務の範囲内ということになってしまうんです。
     
    もう一点、連続勤務で翌日の勤務帯に食い込んでしまった場合の話ですが、うちは師長判断で有休を使って休んでいいという処遇になる場合が多いです。あくまでも超勤が伸びたというだけの扱いです。でも言われてみれば、おかしい気もします。このあたりは勉強不足で的確な答えはできないのですが、勤務が日を跨いだ場合の事例をどこかで呼んだことがある気もします。ちょっと調べてみますね。

  5. emi-emi より:

    初めて、コメント書かせてもらいました。
    いつもすごいなぁと思いながら読ませてもらっています。
    私が勤務している病院の勤務体系、もしかしておかしいのではと思う所があります。
    うちも、待機制で緊急手術がなければお給料はでず、もし緊急手術になったらお給料が出ます。
    平日の日勤が終わり、夜間待機で呼び出しがあっても、翌日は普通に仕事をしていますので、かなり体が疲れます。
    唯一休める方法として深夜24時を超えたら、自分たちの年休を消化して午前中休めます。他の病棟からは、「オペ室は年休の消化がいいね」と言われますが、これってどうなのでしょうか?年休ってこうやってとるものではないような気がしますが、体のためにスタッフみんな今までこうやってきたみたいです。

  6. モトクロス より:

    こんにちは。初めて書き込みさせていただきます。私は国立系の某病院で働いていますがオンコール制です。待機料は出ません。9部屋の手術室を18人で日々回し麻酔科管理の手術が2000件を超え、局所麻酔の手術もあわせると3000件を超えています。勤務も過酷で給料も病棟と比べ格安。また、代休も取れない状態です。ブログ?を読んでびっくりすることばかりでした!!与えられた権利を無駄にしていたことに気づきました。今度時間があったら庶務に行って呼び出し時の給与体系について調べてみたいと思いました。
    手術室に配属されてからモヤモヤした思いをしていたのですが、同じような労働条件の中で働いている人がいることを知って心強くなりました。

  7. アンジー より:

    代休と振り替え休の違い、もっと勉強しないといけないですね。モトクロスさんのところより自施設はすごいです。5部屋を13人で日々回し、麻酔科管理の手術が去年1年で2000件を超えたそうです。今年は、もっと増えるだろうとの事でした。スタッフも最盛期より3人減で、これは病棟の7対1を優先しているからとの事です。40代後半の身体には少々こたえるようになってきております。まして、通常勤務がハードだとなおさらです。今日も待機なので、呼び出しがないことを祈ります。

  8. りんくす より:

    こんにちは。私はとある病院の手術室で働いております。13部屋を約36人で回しております。年間約6700件ぐらい手術があります。有給休暇=病欠の時に使用するもので、希望を出しての有給消化はしたことがありません・・・・このブログを呼んで希望だして・・・・と考えたのですが、人が足りなくなってしまうので無理ですね・・・こんな環境です・・でもみなさんも似たような状況なんですね。
    緊急手術ってなんでこんなに多いんですかね・・・・ うちは当直体制をとっているのですが、25時間拘束されます。夜中ずっと働いていると、倒れそうになるくらいつらいです。解離とかがくると・・・・
    待機とか当直体制ってどんな風なんですか???
     

  9. ピタゴラスイッチ より:

    休日労働は1.35増し。休日夜間は1.6増しです。
    ただ働いた時間分(1.0)を休みにさせることは違法ではありません。
    しかし割り増し分の0.35分は支払わなければなりません。
     
    時間給1000円の人が休日3時間労働した場合。
    次の日に3時間休む。それに加えて3000×0.35=1050円の休日手当てを支払います。
     
    別の休みを与えることに関しては
    休みは1週間に1日(4週に4日)取得すればよいことになっていますから(法定休日)
    休日働いたから、別に休日を与えないといけないということではありません。
    もちろん1週に1日休みがなければ休ませなければなりませんが週休2日制度ならその必要はないでしょう。

  10. 管理人 より:

    emi-emiさん、オペ室は年休消化がいいねってセリフ、うちも言われているみたいです。でもぜんぜん休みじゃないんですよね。二交代制の病棟であれば、夜勤明けと翌日は普通に休み。うちらは24時間働いたとしても、翌日は年休を使っての休み。どう考えたって病棟の方が労働条件的に健全です。
     
    モトクロスさん、おかしいことはおかしいと言える環境、大切ですよね。
    みんなおかしいと思っていても、言えない雰囲気があって、自分を無理矢理納得させている人が多いような気がします。オペ室間で情報交換もあまりされていないから、そんなもんだと信じ込んじゃうんでしょうね。もっと一致団結して手術室看護師として労働条件の改善を訴えていく場があるといいですね。手術室看護学会の別部会としてそういうの、できないかなぁ。
     
    りんくすさん、人手不足でみんなに迷惑かけるから休めないという空気、うちのオペ室にもあります。でもやってやれないわけじゃないんですよね。例えば夏休み期間。通常より少ない人数でもやれてますよね? 要はちょっとくらいタイヘンでも、みんなが好きなときに順番に休みが取れる、そのためにお互いに支え合うっていう雰囲気に持っていければいいと思うんです。私はいまそういう雰囲気を職場内に作ることを目標にあれこれやってます。
     
    ピタゴラスイッチさん、詳しい情報をありがとうございました。
    法定休日はおっしゃるとおりなのですが、就業規則の中で例えば4週8休とするというような病院全体の方針が銘打たれていた場合でも、休みは保証されないんでしょうか??

  11. tom より:

    質問です
    二交代勤務をしています。夜勤帯は夜勤者一人 待機者二人での勤務となっています。そのためオペがなかったりすると一人での勤務となる場合あります。けれど緊急手術の申し込みなど電話番を兼ねているんですけど、それって労働法規的に休憩時間とみなされませんよね?こういったケースは皆さんのところでは問題視されていませんか?

  12. ピタゴラスイッチ より:

    >>管理人さん
    労働基準法では休日を必ずとらなければいけないのは1週に1回、または4週に4回の法定休日のみです。
    就業規則で4週8休が規定されていたとしても必ず取得させなければならない休日は法定休日のみですし休日手当ての支給対象も法定休日のみです。
    ただし、例外として就業規則に、
    「就業規則に定める休日(所定の休日)に急遽出勤した場合には代休を与える。」等の代休規定、または
    「就業規則に定める休日(所定の休日)に出勤した場合には休日手当てを支給する」
    等の時間外規定の文言があれば病院は就業規則を優先してそれに従わなければなりません。
    就業規則にただ単に「休日」と書かれている場合には「法定休日」を指し、
    「就業規則で定める休日」や、「所定の休日」と記載があれば病院で定めた休日(4週8休や祝日等)も対象となります。
    それともう一点注意するべきは4週8休(週休二日)制ではどの休みが法定休日となっているかです。法定休日は何曜日でもよいことになっていますのでどの休日が法定休日なのかでその代休扱いも変わってくることと思います。週休二日制などで法定休日外の休日があるならば就業規則で法定休日を規定しておくほうが労使のトラブルが起き難くなります。

  13. 清水 より:

    私は、約700床の病院で勤務表管理に携わっています。休振と代休の違いについては、経理課も総務課も理解していません。院内で理解できているのは私しかいないのでは?師長に至っては休日と休暇の違いさえ理解していない人も多数います。私は、何度も労基署や労政事務所に足を運び相談していますが、「もう上司に理解させるのは絶望的だから諦めろ」「貴方が職場にいづらくなるだけだ」と言われ、「自分自身に不利益が及ばないなら、他人の利益まで考えてやるな」とアドバイスされました。世の中、そんなもんです。

  14. 管理人 より:

    tomさん
     
    たいへん遅いお返事になってしまいました。おっしゃられている状況がちょっとわかりにくいのですが、待機者二人の扱いのことをおっしゃっているのでしょうか? 一般的な説明になりますが、電話番というのは当直業務に認められている軽微な作業に該当します。自宅待機等に関しては、出勤の義務があるのであればそれは本来一般業務となるというのが法律の解釈です。法律的にはonとoffしかなく、唯一例外的に日直・当直というのが特別に許可された場合のみ存在します。
     
    ピタゴラスイッチさん、解説、ありがとうございました。
     
    清水さん、経理や総務も代休・振替休を知らないというのはマズイですよね。小規模事業所ならいざ知らず700床もあるような大企業であればかなり問題です。監督署のいうのも現実的にはもっともなことですが、社会的にそれを容認していいの? と疑問に感じます。