アンティークの手術器具

遅い夏休みを終えて帰ってきました。

仕事のことは忘れて海外をフラフラっとしてきたのですが、旅先でもなぜか仕事関係のことが気になってしまうというか、気付いてしまうのが悲しいところ。

今回も旅先で、オペナースならではの発見をしてきましたのでご報告です。

とあるアンティーク・ショップに立ち寄ったときの話です。
ロイヤルコペンハーゲンやスージークーパーなどの洋食器やアクセサリーが並ぶ店内に、こんなものが置かれている一角がありました。

アンティークの手術器具:穿頭器

手術室にお勤めの方ならわかりますよね?(画像をクリックすると拡大表示されます)

そうです、手回しの穿頭(せんとう)器。

脳外科の手術で使う頭蓋骨に穴を開ける手回し式のドリルです。
ガリガリと頭に穴を開けて、中にたまった血を抜いたり、はたまた線鋸(せんきょ)で3つの孔をつなげて、骨をかぱっと外して脳腫瘍を取ったり。

何年前のものかはわかりませんが、木の箱に入っていかにも重厚そうな感じ。見た感じ基本的な構造は今も硬膜下血腫手術に使われているものとほとんど変わらないようでした。(これが使われていた当時、穿頭ではなく開頭手術まで行なわれていたかはわかりませんが…)

値札の価格は日本円にして約5万円。

たぶん今ふつうに新品の穿頭器一式を買っても、数十万円はすると思いますので、まあ安いのかな。単に古道具と考えればどうだろうという気はするけど、<ヴィンテージ/アンティークとしての価値は、、、、あるのかな? 正直、わからないです。

欧系の国のアンティーク屋とか博物館に行くと、こういう手術器具のコーナーがしっかりあったりするんですよね。アンティーク・コレクターのジャンルとして「医療器具」というのがあるのかもしれません??

このコーナーには、他には鼻鏡とか鑷子、鉗子などが雑多に置かれていました。なかでも目立つ位置に展示されていたのは鉗子分娩に使う児頭鉗子。

児頭鉗子はアンティーク医療器具の代表格なのかなというくらいに、他でもよく見かけます。確かに独特な形をしていて、これなんなんだろう?? と気になるシェイプではありますが。(『香港医学博物館レポート』の中で児頭鉗子の写真を載せてます)

博物館の医療器具展示にしてもいつも気になるのは、鼻鏡の横に児頭鉗子があったり、並べ方が支離滅裂なところ。きっと、単に「昔の医療器具」というおおざっぱなくくりで、学芸員さんもあまり使い道がわかっていないんでしょうね。

せっかくだったら、婦人科手術の器械セットとか、耳鼻科セット、みたいにきちんと並んでいたらいいのに、と思ってしまうのは手術室看護師の悲しい性なのかもしれません。

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コメント

  1. バニー より:

    すすごいですなー!!
    日本の骨董品屋ではまず目にする事はないでしょうなー。
    私の勤めている病院は結構古いので、オペ室の倉庫の奥なんかにこういった古い手術道具が置いてありますよ。
    売ればいい金に・・・
    なーんて売ったら後ろに手が回りますよね・・・
     
    ぶらり海外旅行は楽しめましたか?
    私は一度も海外に出たことがないのでいいなーなんて思いますね。
    でも、旅行の出先で手術道具を見つけるなんて流石ですね(笑
     

  2. 管理人 より:

    日本では珍しいですが、世界には医療史博物館みたいなものがけっこうあるみたいです。
     
    大学でキュレーター資格も取った私としては、いつか医療史博物館に就職して世界初(?)のナース兼キュレーターとして活躍するのが密かな夢です、、なんてね(笑)

  3. tomo より:

    はじめまして。
    この写真見て・・・・・・『って言うか使ってる・・・』と。
    通常ではないですがbackupとしてあり、たまに登場します。『手回しドリル』という名前で・・・・気道式ではうまくいかないときにいいんだとか・・・・

  4. 管理人 より:

    tomoさん、こんにちは。
    使ってる、って、こんな木箱に入った穿頭器が職場に現役としてあるんでしょうか??
     
    私の職場では、開頭術ではエアドリルを使いますが、切れが悪いときはこの手の穿頭器が登場します。
     
    あと局麻でやる穿頭血腫除去とか脳室鏡手術も手回しドリルでやってます。