看護師のスキルアップ&資格取得

今日は看護学士取得のために通っている(?)放送大学の単位認定試験最終日でした。

今期の予定は10教科、20単位。

一夜漬け&当日勉強で臨みましたが、手応え的には16単位はいけそう。
あわよくば20単位。いずれにしても前期・後期を合わせて学位授与機構申請に必要な31単位はクリアできそうです。

単位認定試験があったり、当直明け・週末にAHAのBLS講習にインスト参加したり、別の勉強会に参加したりでメチャクチャ多忙だったこの1-2ヶ月。

せっかくコメントを下さった皆さんには、まだお返事できていなくてゴメンナサイ。そちらにも少しずつ対応していくつもりでいます。


さて、今日の話のメインテーマは「看護師のスキルアップ&資格取得」です。

いまとある方面から 「『ナースのスキルアップと資格』ということで一緒に本を書きませんか?」 という話を頂いています。

資格 ― キライな話ではないので基本的には乗り気満々なんですが、具体的にどんな話を書こうかと思うと、とたんに行き詰まってしまうので困っています。

よく看護雑誌などでも「資格取得でキャリアアップ!」みたいな特集が組まれていることがあります。それみたいにいろんな資格の概要を羅列して、ところどころに資格取得者の体験談をはさむ、みたいな内容だったら話は簡単です。

でもそんなのありふれているし、それってはっきりいっておもしろくない!

で、いろいろ考えていったところ、致命的な点に気付いてしまいました。

ナースが目指す資格・取る資格って意味があるの??

すごく根本的な話になってしまうのですが、「資格を取る」という行為にはいったいどんな意味があるのでしょう?

もちろん看護師という仕事は看護師免許がなければできないわけで、看護師免許は持っているというのが大前提です。看護師免許の有無でいったらあるなしでは大違い。

でもすでに資格職である看護師が、さらになにか資格取得を取ったらどうなるのか?

もしかしたら、なんにも変わらない、んじゃないかな。

そんな気がしてきてしまいました。

◆ 認定看護師制度の問題点

ナースがスキルアップとして目指す資格の代表と言えば、日本看護協会の認定看護師制度があります。救急認定看護師とかWOCとかですね。

認定を取るのはかなりタイヘンです。まずは養成所への入学試験があって、6ヶ月のフルタイム研修、その後修了試験に合格してようやく認定取得。

6ヶ月のフルタイムの研修というのがネックで、うちの病院の場合は休職扱い(無給)での参加になります。で、念願の資格を取って帰ってきたらどうなるのかというと、基本的にはもとの部署に配属。給料は変わらず、でも認定看護師としての病院全体の仕事は増える、通常勤務のあとの自分の時間として。。。。

最近では、手術看護の認定看護師も新設されて、私も興味はなくはないのですが、今活動している認定看護師さんたちの実状を見ていると、正直、魅力は感じません。なぜならあまりに病院の待遇が低すぎるから。

WOCなどは、医師からも一目置かれたりと院内の地位は高いと思います。でも勤務条件がぜんぜん追いついていないのが現状。

6ヶ月の研修は仕事を休職扱いでいく、つまり無賃です。それでいて学費はかかるし、その間の生活費、交通費、実習施設への謝礼など、出費はバカになりません。単純に考えて半年間の給料がないというだけで数百万円の経済的損失です。それに加えて出費を考えたら年間所得分くらいはマイナスになってしまうんじゃないでしょうか?

つまり認定看護師の認定は5-600万円の投資が必要ということになりますが、果たしてそれに見合うだけのモノがあるのか?

もちろん自分自身の勉強として、これ以上の機会はないと思います。自信につながりますし、院内で裁量権を持って動けるようになるというのも組織の中では大きなことかもしれません。認定取得を機に研究者として大成してその後アカデミックな方面に進むという人も少なからずいるのは事実です。

しかし、対価として数百万となると、単純な向上心だけで済む話ではありませんよね。病院勤務の上での待遇の低さは問題だと思いません?

単純に経済効果で計ること抵抗を感じる方がいるかもしれませんが、でも現実問題としては重要です。

社会人として自律している人間が、ましてや家庭を持っているような人であれば人生設計を考えると思いますが、その中でトータル的に考えて認定を取ることがメリットになるのか? 今の私にはYESとは言えません。

最近、法律の改正で、認定看護師・専門看護師がいることを病院広告に載せていいことになりました。また国立病院などを中心に認定看護師に手当てを出すような動きが出てきているという話も聞いています。それがどの程度なのかはわかりませんが、認定看護師の待遇は、今後は是正されていくとは思いますが、現状の認定看護師制度は看護師個人の積極的な自主性と献身性の上にしか成り立っていないズサンな制度だと思います。

看護協会がいうように、本当に看護界を引っ張っていくリーダーとして活躍して欲しいのであれば、それなりの処遇を与えなければ続きません。今後に期待したいと思います。

◆ 資格取得=自己啓発!?

誰もが憧れる看護界の大きな「資格」であっても、こんな根本的な問題がはらんでいるのですが、看護師が目指す資格のほとんどは似たり寄ったりで、「メリット」を考えてみると、自己啓発だったり自分に自信がつくとかその程度のものがほとんどな気がします。(そもそも看護師免許の業務独占範囲が強烈なのでそれ以上のものはあり得ないというのも事実ですが)

もちろん自分の勉強のために、資格取得を目指す、多いにけっこうです。私もかつて資格取得に燃えていた時代があって、闇雲にいろいろな資格に手を出しました。(最近も救急関係の認定には力が入っていますが)ですから気持ちは分かります。

ただ実益として役立つ資格って、この世界にはないのかなとふと思ってしまうんです。そのガンバリを評価するシステムがほしい!

州にもよりますが、アメリカではICU・ER・OR以外の一般ナースがACLS認定を取ると時給が$2上がるという話を聞きました。(ICU・ER・ORナースはそもそもACLS認定がなければ働けない)

時給で$2って大きいですよね。

日本では看護師たるもの仕事の評価を金銭に求めてはいけない、という雰囲気をなんとなく感じますが、業界のレベルアップには必要な効果だと私は思っています。

ナースの世界は、ただでさえ一般企業と違って昇格といった目標がたちにくい業界だからこそ、そうした資格に着目するというのは悪い発想ではないと思うのですが、現実、ほとんど見あたりません。

ということで冒頭の話に戻りますが、看護師が狙うキャリアアップに関して書こうと思うと、どうしても自己啓発の世界になってしまっておもしろくない!

投資に見合うだけの実益がある資格といえば、助産師でしょうか? 1年間の学生生活と実務のハードさ、責任の重さを考えたら疑問符は残りますが、認定看護師よりは堅実な気がします。(分野で考えたら比較になりませんが)

臨床工学技士や救急救命士なども1年の研修で国家試験受験資格が取れますが、このあたりは看護師免許の範疇なのであまり意味はないか。。。

ただ平成3年8月15日以前に看護学校を卒業した人であれば、専門学校に通わなくても救急救命士国家試験の受験資格があるので、興味がある人はがんばってみるのもいいかも。

救急救命士はもともと看護師の下位資格でしたが、最近の傾向をみると大元である看護師独占業務の範疇を越えて救命士独自に業務拡大していく方向性が見られています。

今のうちに救命士免許を取っておくと既得権として将来的には、看護師ではできないことでも可能になる時代がくるかも!?

それとなにより、私を含め専門学校卒業のナースにとっては、学位授与機構でとる看護学士の学位がいちばん現実的に意味がある資格かもしれません。私の勤務する病院ではまだ前例がないようなので、わかりませんが、学位が取れた暁には給料、上がるかなぁ。

呼吸療法認定士、ME検定、ケアマネージャー、受胎調整実地指導員、滅菌技士、etc.

資格の話は書いているときりがないのですが、とりあえずこんなところで。

結論は、自己評価ではなく、きちんとした社会的他者評価としてナースのがんばりを評価する制度がほしい、ということ。認定看護師制度の評価がはじまっているのを手始めに今後の動きに期待したいところです。

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コメント

  1. みん より:

    試験お疲れ様でした。自分も無事?終わったような気がします。
    これで全部受かれば単位はすべて取得になるのでまずは大卒になれそうです。
    後は学位授与機構に申請しなければ・・・
    給料上がるといいですよね。と思ってやってきましたがあがらなかったらどうしよう。

  2. shisley より:

    こんばんわ。お久しぶりです。
     
    一般ビジネスの世界でも色んな国家資格あるいは、団体認証資格があります。
     
    三大資格(弁護士・国家一種・公認会計士)は別として、
    資格取得=待遇アップという訳ではないように感じています。
    (多少の資格手当てはありますが・・汗)
     
    もちろん資格(免許)がなければ、開業や業務従事ができないものもありますが、
    私の理解としては、
    資格取得と仕事の成果(会社への貢献)は
    必ずしも一致しないということかなというところです。
     
    医療の世界とは若干違うかもしれませんね。

  3. 管理人 より:

    みんさん、今期で放大、卒業なんですね。お疲れさまでした!
     
    教養学士に加えて看護学士。ダブルバッチェラーまでもう一息ですね。私もそろそろ論文の準備をはじめなくちゃと思っているところです。
     
    shisleyさん、ご無沙汰です!
    ビジネスの世界でもいろいろと資格試験や昇級試験があるみたいですね。
     
    必ずしも資格と実益が一致しないというのはわからなくもないのですが、わざわざいったん仕事を辞めてまでして資格取得をするなんてことがビジネス界であります?
     
    公認会計士を取るために仕事を辞めて一念発起なんて話はよく聞きますが、それなりの実益と生涯設計あってのゆえで、ナースみたいに経済性度外視で、なんて話は考えにくいのですが…
     
    その点、ビジネスの世界にいるshisleyさんの意見を聞かせていただけるとうれしいです。

  4. shisley より:

    ご指摘の通り一般の世界で会社を辞めても取るケースがある資格としては、代表的なものとしては弁護士、公認会計士などがあります。
     
    あとは、資格ではないですが大学院に入り直してMBA(経営学修士)を取得するケースもあります。
     
    いずれも資格を取得すればそれなりの社会的評価は得られますが、実益という面では、その後の自分次第という側面が強いと思います。
     
    但し成果を出せば、跳ね返ってくるので、そのような意味では実益があるのかもしれません。
     
    実益(収入?出世?)からみた資格はあくまでも100M走のスタートラインが、
    人より少し(沢山?)前に立てるチャンスがあるだけで、人より先のゴールを保証されているわけではないと思います。
     
    医療(ナース)の世界では、そのチャンスすらない・・・ということでしょうか?(涙)。
     

  5. ちぃ より:

     
    こんばんわ
     
    看護学士の学位がいちばん現実的に意味がある資格だと思うのはなぜですか?
     
    私も専門学校出身で、放送大学など気になってはいるのですが、メリットを感じないので踏み出せずにいます。
     
    取るなら今だと思うのですが、よろしければ教えてください。
     
    ちなみにウチでは大卒でも給料は変わりません。
     
     
    認定看護師に関しては、資格取得にかかる学費は支給され、給料も基本給のみですが支給されます。
     
    また休職ではなく研修扱いです。かなり恵まれた環境ですよね。
     
    取得後、昇給するかはわかりませんが、それなりの待遇で、他部門ですがで新しい部署ができたりと活躍の場は広がる感じです。
     
    今年、手術室からもひとり研修に行きます。
     
    帰ってきてからが楽しみです。
     

  6. ゆうやママ より:

    私も、看護師のスキルアップ・資格取得には大変興味があります。
     
    以前、管理人さんに認定看護師について質問させていただいたのですが、私は子持ちですし6ヶ月も東京で単身赴任するわけにはいかないので、本当に残念です。。。
     
    私にとってスキルアップは、イコール自己啓発です。研修に行ったり、資格取得はモチベーションアップにつながります。
    そして、それが部署やスタッフに影響を与え、結局患者のためになると思っています。
     
    確かに、給料など待遇面も気になる点ではありますが、それらのことは後からついてくるものだと思っているのですが・・・どうでしょうか?(甘いかな?)
     
    当院でも、WOC、感染などの認定看護師がいますが、6ヶ月休職扱いで少ないですが給料が出ます。一部ではありますが、資格取得に必要な学費も支給されているようです。ちいさんの施設同様、恵まれた環境だと思います。
     
    今は、認定看護師の研修に行くことができないので、モチベーションアップのために毎月いろいろな研修に行っています。
     
     
     
     

  7. ORナース より:

    資格を持っている=待遇面でアップという考え方はどうかと思います。
    例えば認定看護師になった人がいるとします。その人は頭が良くて勉強ができるタイプ。しかし実際に現場では仕事が遅く人間性にも問題がある。
    こういう人でも認定看護師というだけで他のナースより高待遇になってしまったら、現場でその人よりも体を動かしてフル回転しているナースは救われないのではないでしょうか?
    認定看護師というだけで格段上の高待遇にしてしまったら、資格マニアの事務ナースばかりになってしまうのではないでしょうか?
    待遇を良くしたいと思うのであればそれだけの実績を上げてから啓蒙活動をするのがベターではないかと思います。
    実績と待遇が比例しないのが医療界や公務員の特徴ですよね。
     

  8. nori_co より:

    わたしの勤める病院では看護学士になっても給料は上がりません。ケアマネージャーになっても上がりません。今から10年くらい前に子どもが2人いましたが、放送大学に通っていたこともあります。
    (わたしは一応オーストラリアの看護学士で、ケアマネージャーの資格も持っています。)
    一応地方自治体の病院で働いていますが、看護職だけではなく、事務職の方も採用された後で大学に行って卒業できても給料は上がりません。認定看護師をとるためには、おそらく休職が認められそうですが、当然無給です。
    わたしのように子どもが4人いて(長男は中学3年生、受験生です)、子どもたちに時間もお金も掛かるようであれば休職して単身上京するということは無理ですね。
    県立大学の看護学科で大学院生の募集があったときには、受けようかと思いましたが、時間的に無理があり、さらに卒業してもそれに見合うだけの利益があるかというと、やはりそれは望めないし、自分よりまずは子どもにお金も時間もかけなければならない時期だったのであきらめました。
    でもわたしの知り合いの看護師で40歳過ぎてから救急認定看護師になった人もいます。子どもさんも2人いましたが、1人で上京されました。
    わたしが思うに、看護師の資格取得についてはやはり自己啓発(自己満足?)である側面が強いと思います。

  9. 管理人 より:

    shisleyさん、お返事ありがとうございました。
    ビジネス界での資格の位置づけ、参考になりました。
    私がもと居た業界では、取得を推奨されている国家資格がいくつもあって、実際の仕事内容とは直接関係なくても資格手当てが出ることが多かったもので、少し認識がずれていた部分もあったかなという気もしました。
     
    ちぃさん、一個人の考え方ということで聞いていただきたいのですが、看護学士と認定看護師を比較した場合の私の考えを書いてみますね。認定看護師のデメリット:休職しないといけない。資格を取っても経済効果的にはマイナス、それも甚だしく。公的なモノではなく民間認定である。看護界でしか通用しない。有効期限があり更新には努力と時間と費用がかかる。仕事量は増すがそれに見合っただけの処遇が見込めない。看護学士のメリット:仕事をしながらでも取得できる。費用がさほどかからない。取得するのは”学歴”なので看護界を離れても通用する。現在と変わらない仕事量で俸給が上がる可能性がある。この話題で書き出したらきりがなくなってしまうのですが、なんとなくお答えになっているでしょうか? 病院として認定取得をバックアップする体制があるという前提だとまた違ってくる部分もあるかもしれませんが。
     
    ゆうやママさん、nori_coさん、おふたりがおっしゃるようにスキルアップ=自己啓発というのが現状だと思います。実際に私にとっても大部分は自己啓発です。ただ認定看護師というような看護界の舵取りを委ねるような人たちの育成までも自己啓発という個人レベルに任せてしまっている現状に疑問を感じます。暴言を覚悟で言うなら「看護師のマジメさに甘えて作られた制度」とでもいうか。本気で看護師の社会的地位を向上させたいという意気込みが感じられないんですよね。でも、皆さんからのコメントで、病院によってはだいぶバックアップ体制ができてきたんだなという点は感じました。本文中にも書いているように今後に期待したいところです。
     
    ORナースさん、ご意見ありがとうございました。おっしゃることはよく分かります。でもこの点、私も自分の中で十分に整理できていないのですが、資格・学歴などの書類上の評価と、実務の評価との乖離の問題だと思うんですね。わかりやすい例でいうと、就職時に大卒と専門学校卒で基本給が違うのは妥当? という話です。http://or-nurse.seesaa.net/article/22873300.htmlのコメント欄でもいろいろ私の意見を書いていますので、よければどうぞご覧になって下さい。