AHA-BLSインストラクターの小技―ストップウォッチの消音化

4月で新しく新人オペナースが入ってくるというのに、本題とは関係ない話で恐縮ですが、今日もAHA-BLSインストラクターの話です。

ガイドライン2005のBLS(一次救命処置)では、蘇生には胸骨圧迫(心臓マッサージ)が最も重要というエビデンスから、「胸骨圧迫の中断は最小限に!」と強く言われています。

そのため、ひとりでCPRを行なうときは、30回の胸骨圧迫が終わってから、2回の人工呼吸を経て次のサイクルの心臓マッサージを開始するまでの時間は10秒以内で! と勧告されています。

アメリカ心臓協会AHAインストラクター用ストップウォッチそのため、AHAのBLSインストラクターは受講生の動きを見ながらストップウォッチで時間を計ることになっています。

アメリカ心臓協会(AHA)が出している「インストラクターズ・パッケージ」(Instructor’s Package : BLS for Healthcare Providers)というBLSインストラクター向けのテキストとDVDのセットを買うと、中にはわざわざストップウォッチも入っていたりします。それくらいに、この時間管理は重要なことのようです。

受講生からすると胸骨圧迫30回が終わるやいなやピッと小さな音が聞こえるはず。実技試験の時も当然、このピッ音はたびたび聞こえてきます。

当の受講生は練習に精一杯で、もしかしたらあんまり気になっていないかもしれませんが、あのピッという音で、自分のやっていることが「評価の目」で見られていると感じてしまって、もしかしたらプレッシャーなんじゃないかなぁ。「心地よい満足感のもとで技術を習得してもらう」というAHA教育の精神からしても、あのピッ音は「試験っぽい」イメージがしてあまり好ましくないような気がします。

ということで、あのストップウォッチの動作音を消したいと思うのですが、AHAのインストラクターズ・パックに入っているロゴ入りストップウォッチには消音機能なんてたいそうなものはついておりません。

そこで習熟したBLSインストラクターの中には、あえて音がしないストップウォッチを別に用意して使っているなんて話もありますが、せっかく持っているAHAロゴ入りストップウォッチをみすみすお蔵入りさせるのはもったいない!

そこで、やってみました! 「AHA純正ストップウォッチの消音化」の報告です。

◆ AHA純正ストップウォッチを改造 → 消音化

「AHA純正ストップウォッチを改造!」だなんて大げさなことを言っても、まあ、なんてことはない、内部のスピーカーの配線をちょんぎったというだけのことなんですけどね(^^;。

きわめて単純な発想です。スピーカーの電線を切れば音は出なくなる、ただそれだけ。

説明するまでもないのですが、せっかく写真を撮ったので「改造」のポイントを簡単にご紹介しようと思います。

ステップ1:ストップウォッチ本体裏側の黒いネジを5本外す
細めのプラスドライバーでネジを5本はずすと、簡単にウラ面パネルがはずれます。その際、手荒にやると押しボタン部分やスプリングがどこかへ飛んでいってしまうのでご注意を。

AHAストップウォッチの消音改造:ウラ蓋を外す

ステップ2:基盤のスプリング2つを外してから、銀色のネジを4本外す
ネジとは別に2本の小さなスプリングがついていますので、なくしちゃうまえに外しておきます。それから4本の銀色のネジを外します。

AHA-BLSインストラクター専用ストップウォッチ

ステップ3:赤いバッテリーが入った赤いパネルを外し、緑色の基盤を取り外す
電池が入っている赤いパネルを取り除くと緑色の基盤が見えます。これは特にネジ止めされていないので、つまめば簡単に取り外せます。緑の基盤をひっくり返すと、いくつかの部品がついた面が見えてきます。

stop_watch_4.jpg

ステップ4:スピーカーから出ている細い金属線をカットする
基盤の下の方に突いている黒くて丸い臼石のような形をした部品がスピーカーです。よーく見ると、スピーカーから極細の金属線が2本出て基盤にハンダ付けされているのがわかると思います。この線のどっちかをハサミでチョキンと切れば改造完了。

アメリカ心臓協会ストップウォッチ

あとは元通りに組み立てててネジ留めするだけ。簡単でしょ?

もしいつか元通りに音が出るように戻したいと思ったら、ハンダ付けの部分をきちんと半田ゴテで取り外して導線にテープを巻くなりして絶縁しておく方がいいかも知れません。

バカみたいな小技でしたが、BLSインストラクターで誰か参考にしてくれる人がいたら幸いです。

でも、くれぐれも「改造」は自己責任でお願いしますね(^^)

このスピーカーを切ってしまえ! というアイデアは、もともとはインストラクター仲間のSさんの発想です。冗談半分みたいな話でしたが、実際にやっちゃったのがこの私、というわけです。

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コメント

  1. なお より:

    おぉっ!すごいですね。
    考えたことも思ったこともありませんでした。たしかに「ピッ」という音、プレッシャーと感じる人もいるでしょうね。
    私もプレッシャーに負けないようにしないと!!

  2. mimimi より:

     すばらしい!Goodアイデアですね.
     
     実は私も,ストップウォッチの音が気になっていました.使っていウォッチはAHAではなく市販のものなので,筐体の穴を塞いだりして音を小さくしていました.
     
     工作は好きで,LEDライトを自作したり,時計を分解して文字盤を好きな写真に変えたりして遊ぶ事があります.ですからスピーカーの配線を切るくらいわけないのですが,そういう発想が浮かびませんでした.まさに“コロンブスの卵”!
     
     さっそく実践します!ありがとうございます!
     
     
     ちなみに普通の練習の時は,メトロノームをならしています.他のインストラクターは小さな電子メトロノームを腰に付けていましたが,私はアナログ人間なので,視認しやすい普通の三角メトロノームを使っています.1分に100回というペースや3~5秒に1回というペースを体感してもらうのに役立っています.

  3. santa より:

    あのオマケストップウオッチはボタンがどうも引っかかって押しづらいので結局昔から使っているアナログ式のストップウォッチを使っています。
     
    でも、アナログ式だとリセットしてから針が戻るまでにちょっと時間がかかるという罠が。skills testで連続して時間を計るところが微妙です。
     
     

  4. ゆき より:

    ほんとにいろんな才能があるんですね。毎回驚かされます。
    私もつい先日、新人さんたちにBLSの指導をしましたよ。私はインストラクターの資格はもってないので、ちょっとしたお手伝いといったカンジでしたが・・・
    あとでインストラクターさんにこの情報を教えたいと思います。
     

  5. 管理人 より:

    mimimiさん、ゆきさん、参考にしていただいてうれしいです。
     
    メトロノーム、私は電子タイプを使ってます。でも三角メトロノームもなんだか味があっていいなぁ。あの動きを見たると体でリズムが覚えられそうな感じがしますね。
     
    santaさんはアナログ式ストップウォッチ! これもなんだかいいですね。最近買ったアナログ腕時計にはストップウォッチ機能がついているのですが、これがアナログなもので、おっしゃるとおりリセットに時間がかかって、しかも腕時計だからボタンが押しづらいことが判明。講習会も意識して時計を選んだつもりだったけどダメでした(笑)