手術室で働く人たち―看護助手さん

手術室で働く人たちと言えば、手術室看護師、麻酔科医、執刀の外科医たちが中心ですが、忘れてはいけない存在があります。

それが看護助手の皆さん。看護補助者とかナースエイドという言い方もあるみたいですが、いわゆる「助手さん」たちですね。

一般病棟同様、オペ室にも常勤の看護補助者が働いています。手術室の助手さんがどこまでの業務をするのかは病院によってだいぶ違うみたいですが、うちの助手さんたちは、たぶん、かなり働いてくれている方だと思います。

中央材料室から上がってきた滅菌物の仕分け、滅菌ガウン着せ、術後の掃除、次のオペのための部屋のセッティング、術中に落としてしまった器械の洗浄+ハイスピード滅菌、シリンジや吸引チューブ、手袋等の部屋の物品補充、体位交換やベッド移動の手伝い、などなど。

書き出したらきりがないのですが、オペ室内のありとあらゆることをやってくれています。

術中に何か器械が急に必要になった場合、廊下に顔を出して、「曲りのクーパー、持ってきて!」とかいうとちゃんと持ってきて、場合によっては滅菌パックを剥いて手洗いさんに渡してくれますし、手術の器械なんて、実際に使うところを見ているわけでもないに、よく名前と形を覚えているなとホント感心してしまいます。

助手さんなしではオペ室がまわらないくらいに重要な働きをしているというのは事実です。

そんなオペ室の助手さんたちですが、決して手術室専門ということでの採用ではありません。病棟で働く看護助手さんたちとまったく同じで、たまたま配属がオペ室になっただけというだけ。

たまに雑誌の通信講座の宣伝で「看護助手のスキルを教えます」みたいなものを見かけることがありますが、ふつう看護助手というと患者さんを検査室へ連れていったりベッドサイドの手伝いみたいなイメージがあると思います。そんなつもりで就職したらオペ室に配属となったら、複雑ですよね。

オペ後の部屋の掃除で、血だらけの床を拭いたり、肉片を拾ったり….

そんなせいか人事異動などで新しい助手さんが入ってきても、長続きしないでやめてしまうパターンが多く、今いる人たちは10年選手ばかり。本来は滅菌物のパックを開けてもらうのは看護師がやるべきなのかもしれませんが、助手さんたちにも安心してお願いできるのはそんなキャリアがあるからなのかもしれません。

◆ 手術室看護助手の専門性

いま私の勤務するオペ室では、術後訪問にいけるようにしようということで業務改善を行なっています。看護師が行なわなくても良い仕事は極力他の人に任せる、ということで助手さんたちの仕事がドンドン増えていっているのが現状。

ちょっと前までは、翌日の手術の術式毎の外回りグッズ(蛇管、シーツ、導尿セット、クッション類)を集めるのは看護師の仕事でしたが、マニュアルを整備することで今では完全に助手さんの仕事になりました。

最近では、部屋のセッティングまで任せようということで徐々に進めつつあるところです。部屋のセッティングは術式によって、また患側が右か左かによっても麻酔器の位置や配管の通し方が違ってくるので、それをいかにマニュアル化するかが今の課題。

そうやって、悪い言い方をすると看護師は助手さんたちに仕事を丸投げしているわけですが、よくも文句も言わずにやってくれるものだと正直思ってしまいます。

実際、助手さんたちの仕事量はかなり増えていて、そのうち助手さんたちの不満が爆発してしまうのではないか、と心配するくらいによくやってくれています。

以前から続いているこのプロジェクトですが、昨年度、私がリーダーをやることになってからは、単に仕事を増やすだけではなく、看護助手業務の見直しということで、助手さんの負担軽減についても考えるようにしています。

無資格の助手さんたちではありますが、Dr.相手に滅菌ガウンを着せたりと専門的な仕事もしてもらっていて、これは助手さんたちでなければ任せられない仕事です。

一方部屋の掃除などは誰がやってもいいわけで、今はオペ室の廊下や休憩室は専門の清掃業者が入っていて、手術をする部屋だけは助手さんとナースで掃除をしています。この部分も業者委託にできれば、助手さんたちにはもっと助手さんでなければできない仕事に専念してもらえる。

ナースはナースで専門的な仕事をしていますが、オペ室の助手さんたちも充分に専門的な業務をこなしていることをもっと認めるべきです。助手さんたちはただの「人手」「お手伝いさん」ではない。

そんな認識をナース側がはっきり自覚しなければいけませんし、助手さんたち自身にも自信を持ってもらいたいというのが私の理想。年輩の看護師の中には、「そんな仕事は助手さんにやらせておけばいいのよ」みたいな人たちがまだまだいますからね。

今までみたいな仕事の丸投げだけじゃ、これからはついてきてくれないと思います。無理難題を押付けるのではなく、どうしたらその仕事を任せることができるか方法論をきちんと考え、数ある仕事のなかでも優先順位をはっきり明示する。

看護師サイドとして自分たちの業務改善のしわ寄せが全部助手さんたちにいっているようでは、職場全体としてはただの不均衡であって、改善になんてなっていないと思うんです。

アメリカではオペ室の助手に関しても、資格制度があるそうです。

ナースエイドとはいえ、オペ室で専門的に働いているんだという誇りを持てるような環境にしていきたいと思っています。

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コメント

  1. なお より:

    オペ室の看護助手、私の住んでる某総合病院では、アルバイトかパートでよく募集がでてます。正職員なら応募したいのですがね。

  2. 元看護助手 より:

    こんなに看護助手のことを考えてくれている看護師さんが元職場にいたら良かったのになぁーというのが素直な感想です。
    病棟から移動してきた人はすぐに辞めますね。仕事の内容が違いすぎるからかなぁ?
    私は仕事に関して、看護師さんの業務をスムーズにする事が最終的に患者さんの利益になると思って頑張っていました。
    術前術後訪問のために看護助手の業務を見直すというのは何処でもある話ですが、実態はどうなんですかねぇ??
    まぁ私は不満が爆発する前に、この仕事の将来性(無資格であること)に見切りをつけて自己退職したんですけど…
    管理者さんの記事にあるように「そんな仕事は助手さんにやらせておけばいいのよ」といわれたときは「看護ってなんですか?」と意地悪な質問をしていたのを思い出しました。
    業務分担やチームワークの意味が解っていない人ってどこでもいますよねー

  3. えむ より:

    はじめまして いつも読ませてもらってます
    私は今 中央手術室の看護助手やってます(委託会社です)
     
    看護師さんに こんな風に思われてるなんて
    ちょっと嬉しかったです
    うちの看護師さんにも そう思われてたらいいなー
    明日から仕事がんばれそうです
    ありがとうございます

  4. のら より:

    私の勤務するオペ室では委託業者にかなりの業務が移行しています。
    オペ材料の準備、器械片付け、部屋掃除、各部屋の材料補充、ガウンを着せるのも、ハイスピードの依頼も受けてもらっています。他にも書ききれないほどです。
    看護助手には、部屋準備や患者の搬入、オペ後術衣を着せる時の補助にはいってもらうなど委託業者より一歩患者に近づいた業務を行ってもらっています。
     
    このシステムになってからは看護師の業務が軽減され、悪い言い方かもしれませんが楽になりました。
    委託業者にも私達と同じく遅出があり、時間外の手術があっても部屋の掃除や輸血返却など任せられるので、その分他の業務が行え「片付けしててオールナイトだよ~」ということは全くなくなりました。私が一番うれしいのはその点ですね。
    今に至るまではやはり色々問題もおこりました。
    委託の方も長続きしないことが多く慣れた頃に人が変わり責任者も大変そうです。(非難ではないです。だってそれだけ大変だから・・・)
     
    最後に・・・「資格がなくても出来ることは任せるべき」という意見も尤もですが、「自分達が働く場所を自分達で掃除する」ことは面倒でも嫌じゃなかったなあ。自分で掃除すると思うと出来るだけ綺麗にしておこうと思いましたし(笑)。
     
    長々書いてしまってすみません。
     

  5. shisley より:

    こんばんわ。
     
    このテーマについては、
    色んな病院で薦めています。
     
    看護師さんのTouch Timeを増やすために、
    材料準備リストを整備して、
    助手さんに材料準備を任せたり、
    カート運用を始めたり。。。。
     
    そのための業務シミュレーションのお手伝いをしたり。
     
    私は一体何屋なんだろう?と思うこともあります(笑)
     
    急性期病院では、7:1基準をクリアするために、
    出来るだけ中央部門の効率化を図って、
    なるべくOP室に看護師を補充しなくても
    運営できる体制を作る、という課題を持った
    医療機関が増えてきているように思います。

  6. 和己 より:

    初めてコメントさせて頂きます。
     
    私は看護師でも看護助手でもなく、委託業者としてOP室で働いています。
    (どうも自分の働いている病院のOP室には看護助手は居ないようです。)
    清掃がメインなはずなのですが、他にも滅菌ガウン着せ、器械の洗浄・滅菌、器械セット、ハイスピード、部屋の薬品や備品の補充、メッセンジャー等、任されています。
     
    こう言う仕事をしている人に対して、こんな風に思ってくれている看護師さんが居る事を知って嬉しく思いました。
    先日看護師さんから「お手伝いなんだから!」と怒鳴られたばかりだったので…。
    でもこう思ってくれる方が居ると知れたのでとても励みになります。
     
    看護助手ではないので、めっつぇんばーむさんの言いたい事からはずれるかも知れないのですが、仕事内容で重なる部分があったので、ついコメントさせて頂いてしまいました。

  7. とも より:

    こんにちは。
    うちの助手さんは、皆さんの病院の助手さんより業務は少ないと思います。伝票、肌着、病理物の搬送、休憩室やステーションなどの掃除、スリッパの洗浄などあとは外にでる雑用が主です。
    うちのオペ室では、キカイ洗浄、滅菌にかける、オペ室の掃除、オペで出たゴミの処分などを外部業者が入ってやっています。専門的な知識がないため指導や教育が必要な部分があります。しかし、看護師としてはとても助かっており感謝しています。
     

  8. maerilla より:

    こんにちは。いつも興味深く読ませていただいています。
     日本では8年臨床で看護師として働き、いまはスペインで日本の助手と準看の間を取ったような資格Auxiliarの資格取得の為に、学校に行っています。 聞いた話によると、こちらの私立の病院では機械出し、外回りもこのAuxiliarがやっているんだそうです。 公立の、それこそしょっちゅう移植をやるような病院では違うのかもしれないですが、安い賃金で雇える助手さんの仕事は結構あっても、看護師はイギリスやお隣のフランスなどに出稼ぎに行かなくちゃいけないくらい就職難なんだそうです。 
    助手とは言っても、日本の準看護学校で教えるであろう(行ったこと無いんでわからないんですが)内容を、1年でムリムリ詰め込んで現場に出しているような感じです。
     
    日本、看護師不足みたいですけど、厚生労働省も講習開くなりなんなりして助手さんたちに基本的な知識を提供して、お願いできる所はしてもいいんじゃないかって思います。
     
    ちなみに、祖母が日本の、全国病院ランキングの3本の指に入る病院に入院した時、そこの助手さんたちのレベルの高さに凄く感心した覚えがあります。 こういう助手さんたちが沢山居たら、看護師ももっと余裕を持って仕事が出来るだろうなと思いました。

  9. 管理人 より:

    ちょっと目を離した隙にたくさんのコメント(!)、ありがとうございました。
     
    個別にお返事を書かせていただくのがちょっと難しい感じになってしまい申し訳ないのですが、皆さんからのメッセージを読ませてもらって医療構造の中での助手さんたちの位置づけの見直しということも考えてもいいんじゃないのかなと思う今日この頃です。
     
    看護師養成教育の中では、他職種との連携ということを学ぶ機会もあります。他職種というと医師、理学療法士、薬剤師などなんですが、看護補助者についてはたぶん話はまったく出てきません(たぶん)。でも病棟なんかだと意外と助手さんたちのほうが、患者さんに関する情報を持っていたりすることがあるんですよね。
    医療資格を持っていないということでコ・メディカルではないという法的な位置づけがあるんでしょうけど、もうちょっと何かきちんとした制度があってもいいんじゃない? と思います。だって、実際専門的にすごく重要な役割を果している場合が多いから。
     
    オペ室内ではナース向けに勉強会を開いたりもしていますが、助手さんたちに対する教育活動はほぼ皆無。ちょっと理屈を教えてあげれば無意味な丸暗記ではなく、考えていろいろ行動できることがあると思うんです。実際にやっていることは単純作業ではないので、そうした共通認識・理解の土台を作っていくことでお互いに気持ちよく仕事ができる環境になるんじゃないかな。職場内で私にもうちょっと発言力がついたら取り組んで行きたい課題です。