夜勤? 当直? オンコール? 労働基準法と手術室勤務

病院に看護師として就職するとき、まずチェックするのが勤務体制だと思います。

2交代制? 3交代制? というやつですね。

ところどっこい手術室勤務となった場合、二交代制も三交代制も関係ありません。たいていの病院の場合、手術室の勤務は病棟とは別枠で規定されていることが多いからです。

そもそも中央部門に属する手術室では、基本的には外来などと同じで平日の日勤帯が勤務時間です。つまり月曜日から金曜日まで、朝8:30~17:30というのが標準でしょうか。

ですので、手術室勤務になるとウィークデーの昼間しか働かないという看護婦らしからぬ勤務になります。準OLなどと言われる由縁ですね。

独特な手術室看護師勤務体制


ただしOLと決定的に違うのは、勤務時間外や休日でも緊急手術に対応しなければならないところです。そこで出てくるのが交代でまわってくる当直(宿直)とかオンコール on callと呼ばれる独特の勤務体系。

夜間など、病院によっては「夜勤」扱いにしているところもあるみたいですが、通常は24時間オペをやっているわけではなく、夜間は実働が生じない場合もあるので、夜勤扱いにするのは病院にとっては不利益。

そこで急患時の待機番ということで、病院内に拘束される「当直」か、自宅待機のオンコール制が採用される場合が多いようです。(夜勤制の病院の場合、オペの仕事がないときは救急センターに手伝いに行くという勤務にしている場合が多いようです。)ちなみに、私の職場では、平日の夜は当直、土日祝日はオンコール体制になっています。

平日の9時~5時が基本のオペ室勤務。病棟に比べて楽か? という話にもなりますが、それはひとえにこの当直やオンコールの回数によります。通常、待機番として2人(器械出し+外回り)は必要ですので、仮に10人しか看護師がいない手術室では、単純計算で1ヶ月あたり6回の待機番が回ってくることになります。

1ヶ月のうち1/5は夜お酒は飲めないし、土日祝日に当っていれば遠出もできず、いつ病院に呼ばれるかというハラハラ感のうちに過ごさなければなりません。これを考えると、休みは休みできっと保証されている病棟の方がいいよなと思ってしまいます。

待機番というのは、労働基準法の上では通常勤務時間(週40時間)にはカウントされませんので、待機料という僅かなお金と引き替えに自分の休みを献上しているようなものです。

私の勤務する病院の場合は、土日祝日は24時間のオンコール体制。待機料は4,000円ほどです。実際に呼ばれて手術(仕事)をすれば、超過勤務扱いとして実働分が支給されます。月に3回くらいだからやってられるけど、これ以上あったらまっぴらごめんです。

それを考えると、オペ室勤務で転職を狙うなら手術室スタッフが多い病院の方がいいと思っています。(大病院だとそれなりに急患件数も多いから呼ばれる頻度は高いかもしれないけど)

ということで、もし今後手術室勤務を希望する新卒者・転職者の方がいたら、あまり公募に載ることはない手術室の勤務体制とスタッフ数をチェックするのを忘れずに!(笑)

先ほども書きましたが当直やオンコールの場合は、労働基準法で定められている週40時間という就業規則には含まれませんので、きっちり週40時間で組まれて仕事をしている病棟勤務者に比べると、オペ室の勤務条件の方がキツイとは言えると思います。

夜勤と当直(宿直)、オンコール on call の違い

夜勤というのは、まあわかると思います。夜から勤務に出て、次の日の朝まで勤務することですね。三交代制、二交代制で勤務時間に違いはありますが、基本的には昼働いているのと同じように夜働くだけで、休憩時間をのぞけばすべて実働時間です。賃金的にはふつうの日当+夜勤手当というのが付きます。

わかりにくいのが当直(宿直)と言うヤツ。これは法律的には「宿直」と言って、労働基準監督署に特別に届け出た上で許可される特別な勤務体制です。基本的には待機が主な仕事で、ルーチンとしてふつうの勤務と同じような仕事をさせる場合は「宿直」扱いにはできません。

当直の通常業務として認められるのは電話番や見回りなどの軽微な労働だけですので、救急センター等でひっきりなしの患者を相手にする医師の場合、本来は夜勤にすべきであって「宿直」は不適当というのが現状だったりします。

宿直の場合は、宿直手当てとして日当の1/3以上は出さなくてはいけないとかことになっていて、緊急オペなどで実働があった場合は実働分の時間外勤務手当てが付きます。

宿直は法律で規定された勤務体制ですので、条件等が法規則で決められていますが、重要なのは、先ほども書いたように労働基準法の上では通常勤務時間(週40時間)にはカウントされないという点。

つまり夜勤であれば、当然その後は明けになって家に帰れるけど、宿直の場合は原則、次の日も日勤です(有給を取らない限り)。

法律的には電話対応とか軽微な仕事しかしないのが原則だから次の日の勤務には差し支えないだろうという考えで規定されているようですが。でもいちおう当直に関しては多くて週一回というような法律的な規制はいちおうは敷かれています。

最後に問題なのは、オンコールです。これはたぶん病院独特なもので法律的にはあまりきっちりとした規定がないのが現状。いちおう労働基準法的には「手待時間」に相当すると言われていますが、病院側のいいようにオンコール制が乱用されているというのが現状のようです。

例えば麻酔科医が一人しかいないような小さな病院だと、麻酔科医は365日、24時間on call体制。1年中お酒は飲めないし、旅行にすら行かれない、なんて状況に。ひどいもんです。

本来は自宅にいようが、自由が制約されているという点で待っている間も「労働時間」に該当するというのが本来の法解釈のようです。

でも実際のところ、実働してはじめてお金が付くだけで、病院によっては「待機料」も出ないひどいところもあるとか。労働に対する対価と休日の保証という点で、労働者として手術室看護師を考えたとき、いちばん割に合わないのがオンコールに関する部分だと思います。

手術室独自の勤務、いいのか悪いのか? 病棟に比べると、比較的ドクターの勤務体制に近いかもしれません。まあ、完全に労働基準から逸脱している医師の激務に比べればまだ看護部はマシですけどね。

以上、あまり語られることのない手術室勤務と労働基準法のお話しでした。

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コメント

  1. けん より:

    現在勤務している病院の手術室は、オンコール体制です。月に合計7回ほどのオンコールがあり、休みの日のオンコールは2回、平日は5回当番があります。
     
    平日のオンコール料は、1200円。休日のオンコール料は、2300円です。呼ばれたら、時間外手当が実働でプラスされます。夜間に呼ばれて手術が夜中に終わるようなオペであれば次の日は10時出勤や13時出勤、一日休みといった感じになります。(呼ばれた時間帯と帰る時間帯によって次の日の時差出勤がかわってきます。)
     
    例えば、アッペで21時に呼ばれて帰るのが23時過ぎになっても0時を過ぎてないので時差出勤は発生しません。一番、次の日が辛いパターンです。しかし、2時に呼ばれて4時過ぎに帰ると次の日は一日オフです。こんな感じで院内の規定で時差が決められています。
     
    今はオンコールですが、もし夜勤や当直になると手術の無いときは他の部署(ICUや救急など)へ応援にいかないといけなくなりそうです。他の部署の配置や勝手などわからないのでそれもどうかと思います。
    今のままがいいのかなぁ。

  2. ここりな より:

    はじめまして!時々、のぞかせていただいてます。私の勤務する病院は、110床ほどの中小の急性期の病院です。外来ナースが、オペやカテ、内視鏡部門などすべて担当します。その日出勤したら、午前は通常の外来業務、救急搬入の対応、午後より、オペやカテなどにふりわけられます。わたしは、先日いきなり整形のオペにいれられ、外回りをさせられました。見たこともない整形の手術、しかも麻酔のこともよくわからないし、そんな中徐脈になり輸血もポンピングしたり。わけもわからないまま、外回りナース私を含め2人!!ひどすぎませんか?おまけにドクターは暴言を吐くし。まずは、直介からおぼえていってもらいます。っていわれてた矢先、人がいないからと、急遽私が入らされたわけです。怖かったし逃げ出したい気持ちでいっぱいでした。
    なんせ、外科医が最悪な人で、大変です。けど負けずに絶対に前に進んで、その暴言を吐くドクターに認められるようにがんばるつもりです。またいろいろ質問するかもしれませんがいいですか?初めてのコメントで、あつかましくもお願いしちゃいました。すみません。

  3. 管理人 より:

    けんさん、コメントありがとうございまいした。月7回の当番はキツイですね。でも夜中に呼ばれた場合の次の日の勤務調整がしっかり決められているのはいいことですね。うちは日曜日on callで夜中過ぎまで仕事をしたとしても、翌朝は8:30の定時には出勤してこなければいけませんでした。仕事の度合いによって、朝すぐに帰っていいよといわれる場合と、半日だけ働いて帰る場合があるのですが、なにより朝定時に出勤してくるのがツライ! ということで、つい最近私から提案して夜10時以降働いた場合は無条件で次の日は来なくてよいというルール作りをしたばかりですなんです。なんとなく昔からみんなそうやってきたけど、改善できる点はたくさんあると思うんですよね。ただ誰も言い出す人がいないのが問題。ということで私が率先して、いまオペ室の労働条件の改善に取り組んでいるんです。その過程で調べたことをまとめたのが本稿だったりします。
     
    夜勤や当直にすると他部署への応援に行かなくてはいけない、という心配事項、わかります。うちはたまに院内拘束のon call番があるのですが、院内拘束にも関わらず自宅待機のon callと同じ扱いで、待機料もかわらないんです。でも病院内に拘束する以上、その自由度は自宅待機とはまるきり違うわけで、どうにかしてほしいという要望を出しています。その際に危惧されるのが、だったら手当てを上げるかわりに他部署を手伝えといわれやしないかという点。それがあるせいで、上へのうまい話の持っていき方をいま検討しているところなんです。
     
    当直扱いにできれば実務がなくてもよいという条件のまま手当ての金額が上がるんですが、それで上が納得してくれるか。まあ、本来は当直である業務をon call扱いでうちらにやらせていることが問題で、法律的には当然の改善要求だとは思うのですが。

  4. 管理人 より:

    ここりなさん、はじめまして。オペ室業務も専属ではなく、外来の方がすべて対応しているんですね! 科が限られているとか、オペ件数が極端に少ないというのであっても、たぶんキツイと思います。整形の手術なら体位もいろいろあるだろうし、、、いきなり現場に投入されたら動けないのはあたりまえ。逃げたい気持ちというのもわかります。そういうシステムであれば、医師が主体的にセッティング等を行ない、ナースはあくまで補助的な役割というのであって、かろうじて成り立つ手術だと思うのですが、医師自身がそのあたりを自覚していないのかな。そんなシステムで他のオペ室のような専門性を求められると厳しいと思います。でもここりなさんの意気込み、応援しています。またなにかありましたら気軽に書き込み下さいね。

  5. オペコ より:

    先日初めてオンコールを経験しました。病棟からOP室に行った私はこんな勤務ありえないって思いました!!呼ばれるか呼ばれないか分からないなんて...ハッキリして下さいって感じです。幸い(?)な事に呼び出しはありませんでしたが休むに休めないまま次の日も勤務できつかったです(><)私は3交代だという事で今の病院に転職しました。ところがOP室に配属で...勤務は日勤かオンコールという状態。手術はおろか準備や片付けがよく分からない状況でオンコールなんて...。めげずに病棟希望を出そうと決意しました。

  6. hayamai より:

    はじめまして。
    毎回、楽しく拝見させていただき、勉強させていただいてます。
     
    私はORN1年目なのですが、年始のon call番に当たってしまって、今からAAAのラプチャーが来たらどうしようかとドキドキです…
     
    on callに当たったのにはドキドキしつつも全然文句はないのですが、凄く腹が立ったことがあるんです。
    本来は、私達1年目は年末年始の日当直・on call番から外されていたんですが、今日年末年始の出勤表を何気なく見たら、私の名前が何時の間にか書き込まれていて。(出産の関係で1人入れなくなってしまったためですが)
    そういうのって、普通入れたら直接私に教えてくださるものですよね?
    そういうことは一切聴いていなくて、いつ名前が書き込まれていたのかも分からない状態。(ちなみに年末年始の勤務は先月既に全て決定していました。勿論、私の名前はありませんでした。)
    もしこれで私が遠方に旅行にでも行ってしまっていたら、どうしたんでしょうか。勤務表を見ていなかった私の責任だといわれるんでしょうが、納得がいかない!!
    1年目には文句を言う資格がないと言われればそれまでですが、こちらの予定を聞くことも無く、30分で駆けつけることが出来る場所にいなくてはならないon call番に知らない間にされていたのにとても腹が立ちました。
    こういう時こそ、普段口うるさく言っているホウレンソウを怠るべきではないのではないでしょうか…
     
    何か全然関係の無い愚痴じみた書き込みですみません。
    これからも、応援してます。頑張ってください。

  7. 管理人 より:

    オペコさん、on callデビュー、お疲れさまでした。
    いつ呼ばれるかわからないという不安、それに何が来るかもわからない。イヤですよね。でも私は最初のうちは、オンコールが大好きでした。緊急手術というなんだかドラマの中のような世界に自分がいるという高揚感とでもいうんでしょうか。それと他にスタッフがおらず、自分がやらなければ助からないみたいな使命感。実際、急患で大変な症例にあたる度に自分が甘いと気付かされたり、日頃の業務への取り組みも変ったりと、成長する自分を実感できたりもしました。そんなふうに視点をちょっと変えてみると、オンコールも楽しみになったり、しませんか??
     
    hayamaiさん、はじめまして。
    年末年始のオンコール体制にいきなり組み入れるなんてひどいですね。オンコールに入るタイミングというのは、誰かが勝手にポンと決めるのではなく、プリセプター、教育担当者、師長、主任などで充分に吟味して決めるべきものだと思っています。だってホント危険ですもん。やるとして最初のうちは別のサポート体制を整備しておいたり、少なくとも本人に打診もなく勝手に組み入れるものではないと思います。それに年末年始の貴重な休みを潰されるわけだし、地方から出ている人なら当然のように里帰りを計画するところですよね。ちなみにうちの場合は1年生はオンコールには組み入れません。それと日にちを決めるのもくじ引きで決めてます。
     
    スタッフの人数によっては仕方ない部分もあるかもしれませんが、hayamaiさんも本当にその時期にオンコールをはじめるのが適切であるのかプリセプターに相談されてはどうでしょう? 場合によってはon callを取るにあたって今のうちから訓練しておくべき事というのもあるかもしれませんし。

  8. トモ より:

    はじめまして。
    私はオペ室、新人看護師です。私が働いているオペ室はなんとスタッフが科長を入れて10人です。待機は月に10日以上、週末待機は月に2回が普通です。1日の待機料は1000円です。これって安いですかね?

  9. 管理人 より:

    トモさん、私は今の自分の職場しか知りませんので、世の中の平均的なオペ室事情を知りません。ただ一月のうち、1/3以上が24時間仕事に拘束されているって、多いなと率直に感じます。待機料に関しては出るだけマシというような病院もあるようなので、なんとも言えません。。。
     
    病棟勤務者に比べると明らかに労働条件が悪いのは間違いないので、例えば手術室勤務手当てとか危険手当とかでその分の埋め合わせがされているはず、と思いたいというのが私の印象です。トモさん、がんばってくださいね。

  10. トモ より:

    管理人の方、返事&激励の言葉ありがとうございます。ここはとても勉強になり、気に入っています。これからも楽しく見させていただきます。

  11. tokyoianblog より:

     労基違反かどうかはグレーゾーンのようですね。給料の1/3以上は出すようにとか、月の時間制限が決まっているようですね。
    http://blog.livedoor.jp/stubborn11/archives/50387539.html
    http://blog.livedoor.jp/stubborn11/archives/50268096.html
    http://blog.livedoor.jp/uenosaku/archives/50161739.html
     
     つまりは知らずにブラック企業に染まってる可能性が高いですね。1000円とかでオンコールとか正直馬鹿にしているようなお給料ですよね。1000円のためにビール飲めないのは個人的には許せないです。基本医療従事者は経営者にタカラレてますよね。。
     

  12. たか より:

    はじめて投稿させていただきます。僕はOP室で7年ほどの勤務経験をしています。今の病院では、手術室スタッフが9名いますがパート勤務の人もいるので実際は7名でoncallをしています。なのでoncallの回数は月に15日程度になってしまいます。しかも、待機料は1日350円と異常に低料金で設定されています。また、手術室としての当直がない代わりに外来での当直や準夜勤をしているんですが、その勤務中に発生した緊急手術に対しては就業時間内ということで時間外手当が発生しないんです。しかも、手術室手当や危険手当等の優遇措置もありません。そんな病院って他にももっとあるんですかね?

  13. mineko より:

    初めて投稿します。
    私はOP室に勤務しています。
    年間手術件数は2100件ほどあり、15人で、日勤と待機制でおこなっていますが先日24時間継続勤務になってしまったことがありました。次の日は当然有給休暇となりましたが、24時間勤務は法的にはどうなのでしょう?
    労働基準法的にはどうなのでしょう?
    このようなことは数年に1度しかないのですが、、、