豊胸手術 ~ 美容外科の世界

皆さんの病院では、豊胸手術ってやってますか?

私の勤務する病院では、形成外科の他に「美容外科」も正式に標榜しているので、もしかしたら市中総合病院ではあまりしないようなコスメティックな手術も結構行なっています。

ここで美容外科手術の経験を積めば、そのうち美容外科クリニックに転職できないかななんて冗談半分に思っているんですが、やっぱり美容外科手術は見ていてとても興味深いです。

ということで、もしかしたらオペ・ナースの間でもあまり知られていないかもしれない美容外科手術の話を少しばかり….

◆ 豊胸手術

よく女性誌なんかにも広告が載っている豊胸手術、実際のところ、やることはシンプルです。皮膚切開して大胸筋の上で脂肪層を剥離。そこにシリコンバック(最近はシリコンではなく生理食塩水を入れたものが多いです)を入れて、ドレイン留置して閉創。ただそれだけです。片側だけだったら30分ちょっとかなぁ。

手術のポイントとしては大胸筋の剥離でしょうか。かなり広範囲に渡って剥離をしますので一般的な剥離子ではちょっと無理。そこで専用の剥離子を使います。正式な名称はなんというのか知りませんが、うちではブーメランと呼んでいます。

ホント見た感じブーメランのような形をした大きな器具で長さは3-40cmはあるでしょうか。それを腋窩に付けた5cmほどの切開創から挿入、胸の膨らみの立ち上がりラインに合わせて筋層と脂肪層を剥離していきます。

このとき、シリコン・バックの大きさに対して剥離がギリギリくらいだと乳房の立ち上がり角が大きくなって不自然になります。自然に見せるためにどの程度剥離をするかが手術のポイントのような気がします。

まあ、いずれにしても仰臥位に寝ててもツンと上を向いた乳房、張りがあってすごくきれいなのですが、患者の年齢によっては不自然に見えることも。。。そのへんのさじ加減と本人の理想がバッティングしてなかなか難しそうです。

実際に豊胸手術を受けに来る患者さんを見ていると、若くて30歳前後、多いのは30代半ばから40代前半くらいの人が多いです。やっぱりある程度お金を持ってないと受けられない手術だからでしょうね。独身の方が多いのかと思いきや、結婚されている方もいたり、いろいろ事情は複雑みたい。

うちでは、他のクリニック等で入れたシリコン・バッグの入れ替えなど修正手術を行なうこともあります。そのときにビックリするのが、切開ラインを乳房の下に入れていることがある点。ふだんは若干垂れる胸の裏側になるから見えなくていいのかも知れませんが、修正でサイズが変わったりすると、明らかに膨らみの一部に皮切ラインが来てしまったりして、見た目上、非常によろしくない気がします。

一度そこにキズを作ってしまうと、どうしても次もその皮切ラインを使って切らざるを得ませんので、最初から脇の下で切っておいてくれたら良かったのにね、みたいなことがよくあります。

もし豊胸手術を受けられる方がいたら、切開ラインがどこに入るのか、きちんと確認しておいたほうがいいよと、お節介ながら思っています。

◆ 美容整形手術という言葉

最後にまた余談です。世間一般では美容整形という言い方をしますが、医学的には×。医療法によって正式に定められている診療科名(標榜科)としては、美容外科が正解。マスコミで整形手術、プチ整形だなんていうものだから、瞼を二重にするために整形外科にかかる人が実際にいるとか。我々からすると「え、まさか!」という笑い話にしかなりませんよね。(整形外科の荒々しい骨大工のイメージと、繊細な形成・美容外科のイメージ、対極みたいな感じなので)

世に流布している「美容整形手術」という言葉、罪作りな言葉だと思います。

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コメント

  1. さっそくのコメントありがとうございました。一般向けではないとのことですが、現場のそのままでもかなりわかりやすく書かれていて、私にはちょうどよいです。
     
    確かに全身麻酔って、よく寝たというより、気を失った感覚ですよね!さっき目を閉じたのにって言う感じで。
     
    管理人さんもかなりの手術を体験されているのでびっくりしました。
     
    豊胸手術って、なんだかすごいですね。
    どこかで、豊胸手術した胸かどうか、手術の時全裸になったらわかるって聞いたことあります。(豊胸手術してると、胸が横に垂れないからとか)ほんとかどうかは定かではないですけど(笑)
     
    ※ホームページアドレスは、手術当日のブログです。

  2. 管理人 より:

    私の場合、手術と言っても虫垂炎とか軽いものばかりですけどね。いまの私がいるオペ室のナースたちは手術を受けたことがある人というのがほとんどいなくて、職場内で私が患者の視点でも発言ができるというのは強みかなと思っています。麻酔の説明のときなんかも、実体験から話せますし(^^)
     
    闘病日記、ひととおり拝見させていただきました。日頃は術後訪問しても「ありがとうございました」的な話が多い中、非常に参考になりました。
     
    キイロイトリさんのところには、手術室看護師の術前訪問、なかったんですね。オペナースにとってみれば、最大の腕の見せどころ(?)なのにタイミングが合わなかったみたいで残念です。
     
    もし手術のとき、ああしてくれたらよかったのに、みたいなことがあったら、ぜひ聞かせてください。今後の看護に活かせていけたら、、、と思います。

  3. キイロイトリ より:

    手術室看護師さんの術前訪問、楽しみにしていたんですけどね~。唯一きちんとお話できる機会だったのに、非常に残念です。
     
    でも、手術室の案内の用紙が置かれていて、かなり詳しく手術の流れが記載されていたので、よかったのですが、やはり直接会えなかったのは悔やまれます。
     
    ただ、「手術の途中で気分が悪くなったら申し出て」の記載は、全身麻酔の人向けではなかったようですが(笑)
     
    そうそう、このブログで、紹介されていた「手術室の中へ―麻酔科医からのレポート」読みました。自分も体験したばかりだったので、とてもわかりやすくてよかったです。
    なぜ、絶食絶水なのか、全身麻酔で体はどうなっているのかとか、手術するということが体にどんなに影響するのかとか、よくわかりました。

  4. 管理人 より:

    「手術室の中へ―麻酔科医からのレポート」、ホントいい本だと思ってます。一般の人向けの本ですが、オペ室での新人教育としても必ず読ませているくらい。実は看護師といえど学校では手術のことってほとんど教わらないんです。入職直後はまるきり素人さんと同じ。手術室の内部の事情もわかると同時に、手術を受ける人の心理状態なんかもわかるのがいいなと思っています。