手術室を知るために~オススメの本「手術室の中へ―麻酔科医からのレポート」

手術室で日々行なわれていることや、手術室スタッフ(看護師・麻酔医・術者の外科医)の仕事について書かれている市販の本って意外と少ないんですよね。

そんななか、手術室入門書としてお薦めしたいのが「手術室の中へ―麻酔科医からのレポート」(弓削孟文 著:集英社新書)です。

手術室の中へ―麻酔科医からのレポート」(弓削孟文:集英社新書)

麻酔科医が書いている本なので、どうしても医者よりの視点にはなっているものの手術室看護師について書かれている部分も基本的に真実。

意外と知られていませんが、手術室に常勤しているスタッフといえば、麻酔科医師とオペ室専属ナースだけです。執刀する各科の医者というのは、手術の時にオペ室に来るだけなので、オペ室全体のことをよく知っているのは麻酔科医とオペ専任看護師だけなんですね。で、現役の手術室看護師がオペ室事情を書いた本がというのが今のところ存在しない以上、現時点ではこの本がもっともよく手術室の実態を著わした本だと思います。

手術の流れ、全身麻酔・脊椎麻酔・硬膜外麻酔のこと、麻酔にまつわる合併症など、手術室勤務であれば最低限知っていなければならない事柄が一般人向けの言葉で平易に書かれています。

話はかわりますが、麻酔科医師と手術室看護師は切っても切れない深い関係にあります。言うなれば、手術室看護師というのは「麻酔科看護師」でもあります。実際のところアメリカでは、麻酔専門看護師というRN(日本で言うところの正看護師)の上に位置する資格があって、薬物処方を含めて麻酔管理ができるようになっています。

日本でも麻酔科学会からは麻酔医不足を解消するためにアメリカのような麻酔専門看護師の創設を要望しているようですけど、日本看護協会が反対しているという現状があったりします。

余談になりましたが、とにかくとかく表だって語られることの少ない手術室内部の諸事情を知りたいと思ったら、まずはこの「手術室の中へ」を読んでみることをお薦めします。もともとは一般向けの新書ですが、ふつうに看護師の方が読んでもそれなりに役立つ本です。反対に言えば一般人向けの本にしてはちょっと難しいというか固い感じの本なんですけどね。

まあ、医学書と違ってふつうの新書なので、数百円で買える点は魅力です。オペ室に配属されたのなら、まずは読んでみてください。

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コメント

  1. yasu より:

    はじめまして★今春から大学病院ORで働いています。。専門的な用語を検索していたら、ちょうどここに出会って、ちょっとコメントさせていただきたいと思って書き込みました。
     
    私自身、病棟希望で・・・・患者さんとのかかわりが大好きです。いろいろな面から看護を学び、大学を卒業しました。家族看護などにも興味があり、いろいろな講演会を聞かせていただいたりしていました。いろいろなことを考えて、自分なりの看護観を見つけて、就職した先が手術室でした。正直辛くて、毎日なんのためにやっているのか、よくなっていく姿も見えない手術場に戸惑いながらも、毎日プリの先輩などに支えられてやっています。
     
    私自身、勉強は好きなほうで、ウロマチック症候群について調べていて、ここにたどりついたのですが、詳しいエビデンス・考えかたがとても参考になって、とてもうれしい気持ちです。そういうことを一個ずつ考えて、自分の看護の要点としてみていく視点が少しわかったような気がしてうれしいです。本当にこれが病棟で役立つか・・・・など、は本当に疑問なことがあります。外科より内科がやりたかったので、なおさらなのですが、でもちょっと自分の勉強したい視点が見つかったような気がして、少しうれしい気持ちになれました。確かに、ORの仕事は私には向いていなくて、入職してからずっと悩んでいるところです。これから、少し視点を変えて管理人さんのような勉強のしかたで、楽しく学びながら働けていけたら、少しはORが楽しくなるかな、と思っています。これからも時々拝見させていただきます。よろしくお願いします★

  2. 管理人 より:

    yasuさん、はじめまして。
    内科系を希望していたのにオペ室配属。なのにそのポジティブな発想、なんだかうれしいです。
     
    勉強好きとあらば、オペ室はおもしろいかもしれませんよ。
    なにぶん閉鎖的な世界で、他との交流があまりありません。それ故に昔からの慣習に縛られていて、nonエビデンスなことがとても多いから。言い方を変えると、今後すごく変わっていく世界だと思うんです。
     
    ちょっとした疑問点から始まって新しい発見が至るところにあるはず。
    新しいオペ室看護発展のためにも、今後の活躍を期待しています!

  3. 三児の母 より:

    はじまして。初コメントさせていただきます。私は看護師として勤務をスタートする新人から手術室に配属になり、約半年…手術室での仕事に携わり、経験を積む事無く、病気…妊娠をした為に外来へ…一身上の都合により看護師の経験を積む事無く退職し、現在にいたります。看護師という仕事から離れてから約5年目…やっと自分の時間もそれなりに確保出来る様になったので、看護の勉強を再スタートし、再就職目指して頑張っていこうという段階なのですが、手術室…看護師経験を積む事無く退職に至った為、『勉強したい』と言う気持ちが強いのですが、知識や技術があまりにも無さ過ぎる為、何から手をつけて行ったら良いのか…正直、悩んでいます。
    勤務していた頃は日々新しい手術に入らされ、器械や術式…を覚える事に必死で勉強しなくてはいけない事は山積みであるのに…麻酔…心電図…の勉強をするまで余裕が無く、過ごしてしまった為、再就職の病院も手術室に…と考えてる手術室看護師として、勉強の仕方&進めかた…など教えて頂きたく思っています。
     
    ヨロシクお願いします。
     
     

  4. 管理人 より:

    三児の母さん、はじめまして。手術室への再就職を考えてらっしゃるんですね。勉強の進め方ということですが、手術室看護って、特に器械出しの部分は、日野原重明氏風にいうと完全にアート(職人芸的とでもいいましょうか)な部分だと思います。サイエンスであれば、いくらでも勉強のしようもあるのですが、アートの部分は経験によるところが大きいので現場で実戦経験を積むのがいちばん。ただそこに術式毎の解剖学というのが頭に入っていると、実になる部分がだいぶ違ってくると思います。ただやっぱり的確な器械出しというのは、本人のセンスによる部分が大きいんですよね。
     
    ということで、事前に勉強するのであれば、麻酔看護や外回り業務について行っていくのがいいかなという気がします。施設によっては外回り業務は器械出しがある程度できるようになってからということが多いと思いますが、このあたりは知識が多いに実務をカバーできる部分なので、ガンバリ甲斐があるかと思います。
     
    器械出しは現場で覚える技術、外回り・麻酔看護はフィジカルアセスメントが多いにものをいう部分だから積極的に勉強すべき。
     
    以上は私の個人的な考え方ですが、このブログを見てくださっているベテランORナースの皆さんはどうでしょうか? よければアドバイス、お願いします!